HOOKSOFTのサブブランドとして設立されたSMEEも2017年で設立10年。これまで話題作も提供してきた同ブランドだが、その10年間で様々な独自の作品へのアプローチを試みてきた。その新しさは、時には従来の美少女ゲームの枠に収まらないこともありながら、たくさんのファンを引き付けてきたのも事実。そのSMEEの作品作りのこだわりを、最新作『Making*Lovers』と合わせてディレクターの宅本うと氏に伺った。

期待の新作『Making*Lovers』。SMEEならではの積み重ねが本作でも発揮されている

ヒロインの魅力を深める「選択肢」の作り方

定価:9,990円
発売日:2017/11/24
ジャンル:恋愛ADV
原画:谷山さん
シナリオ:早瀬ゆう、岸田ソラ

お試し期間から本当の恋愛へ

「恋愛は付き合うまでの過程がすべてだ……!!」彼女いない暦=年齢 の俺は、どんなに馬鹿にされても譲れない、そんな恋愛への強いこだわりがあった。“恋愛”とは、その交際に至るまでの “過程”、そこにこそロマンがなくてはならない。しかし ある女子の一言により、俺はその考えを急遽改めることになる。SMEE10周年を飾る本作は、ブランドで初めての「恋愛関係になった以降」にスポットを当てた実験的美少女ゲームだ。

ブランド設立10年も、まだまだユーザーに浸透していないという危機感

―――SMEEさんは2017年で設立10年ですよね。

宅本(敬称略/以下同):他メーカーさんの10周年を見ると「ああ、こういうヒット作があったな」って思うんですけど、SMEEを振り返っても、そういうのがないので「薄っぺらい10周年だなあ」って。一番のヒット作といえば『ラブラブル』あたりと思うんですが、美少女ゲームファンからすれば「知らねえよ」って人も多いと思うんです。とてもじゃないけど10年続いたと威張れるレベルとは思えないですよね。

―――とはいえ『ピュア×コネクト』や『カノジョ*ステップ』といった近2作もユーザー満足度の高い作品だったと思います。

宅本:確かに手ごたえは感じています。SMEEの作品作りのテーマは「二次元萌え」ですが『ラブラブル』以降、その作り込みは高める方向にいけたかなと思ってます。シナリオ・早瀬ゆうと僕の目指すところが一致していた、だからこそ、そこがユーザーさんに響いているところだと思います。

―――またSMEE作品の特徴として、ヒロインの年齢が比較的高めのように思えます。

宅本:「二次元萌え」を目指していますが、やはりエロゲーのヒロインですから、可愛いだけではなく性的にムラムラできる存在じゃなければいけないと考えています。そこを描こうとすると、等身も高めで、精神的にもある程度成熟したヒロインが必要になる。また、そういうヒロインをちゃんと描けるからこそ、いわゆるロリ系ヒロインの個性も際立つと考えています。

―――なるほど。

宅本:ただ、そういうところをあまり難しく考えないように、とも思っています。設立当初は「HOOKSOFTとの差別化」を意識していました。HOOKSOFTは王道の純愛系作品を作るブランドですから、差別化を意識すると凌辱系等のエロに特化した作品をイメージしてしまう。でも、僕自身そういうゲームを作る才能はないって考えると、差別化を意識しすぎるより、自分の作りたいものを突き詰めたほうが結果としてHOOKSOFTとは違う作品になるんじゃないかと。「今、自分たちが作りたい作品、作れる作品」を考え続けてきた10年が、SMEEの10年だったと思います。

―――確かにSMEEの作品ラインアップを見ると、HOOKSOFTとの違いは明確です。

宅本:私の中でも「HOOKSOFTでは作れないゲームを作りたい」という気持ちがありましたので、それを素直に出すことが大事だったんです。なので「こういう要素は入れなければいけない」というような縛りを設けないように考えています。例えば初期作品はハーレム要素が人気だったんですが、それも「絶対入れなければいけない」と考えないようにしています。ユーザーさんには「SMEEはいろんなことをやるけど、それが面白いよね」ってポジティブに受け取ってほしいと思っているんです。

―――ユーザーさんの反応は10年で変わってきていますか?

宅本:どうですかね。SMEEのユーザーさんって、層がバラバラなんです。年齢層で見ても各世代まんべんなくいらっしゃりますし、「ここがいい」という意見も様々。だからいまだにどの層をターゲットに作っていいのかわからなかったりするんです(笑)。なので、敢えてユーザー層を見て作るのはやめています。自分たちの好きな作品を作って、それを受け入れてもらえる人に遊んでもらおうって感じはありますね。そうだなあ……二次元フェチズムが強い人、二次元ヒロインと恋愛をしたい人に強く支持してもらえているというのはあるのかな。

―――そんなSMEEさんですが、『カノジョ*ステップ』では原画やシナリオを製作委員会という形で出されていました。

宅本:実はずっとエロゲーの作り方に違和感があって、原画家やシナリオライターなど一部主要スタッフにかかる比重が高すぎると考えていたんです。それだとそのスタッフに無理を強いることになってしまう。その結果、健康を害してしまうのはよろしくないし、生産性も落ちてしまいます。健康面や精神面でしんどくなった時に、チームで支えられる開発環境を作れないかと考えた結果なんです。美少女ゲームでは原画家やシナリオライターは重要だからこそ、作業負担を分散してあげる必要があると考えています。

恋愛以降の主人公とヒロインの関係をじっくり楽しんでもらう『Making*Lovers』

―――ここからは最新作『Making*Lovers』について、お話を伺っていきます。この企画はどういう経緯で生まれたのですか?

宅本:ユーザーさんに気楽に恋愛生活を楽しんでもらうことを第一に考えまして、出会ってから恋愛に至るまでの過程をプロローグに凝縮して、本編では恋愛生活をじっくり楽しんでもらおうという企画です。恋愛ゲームと言うと、やはりそこに至る過程に重きを置く作品が多いですし、SMEEもそういう作品を作ってきました。なので、今回は恋愛関係になって以降をじっくり描いていこう、と。だから恋愛に至るまでの経緯を楽しむのが好きな人は前作までのゲームを遊んでくださいっていうところです(笑)。

―――割り切っていますね(笑)。

宅本:今どきの恋愛って、「好き」という気持ちが高まってくっつくだけじゃなく、「好きだから、とりあえず付き合ってみようか」っていうのもあると思うんです。本当の恋愛になるかのお試し期間を経て、「やっぱりこの人でよかったんだ」というところに至るまでの恋愛を描こうと思っています。だから付き合うタイミングが違うだけで、描きたいことは一緒なんですよ。すぐ付き合いだすからってヒロインがビッチなわけじゃない。だって付き合ってすぐにエッチしたりキスしたりしないですよね(笑)。

―――ヒロインは5人ですが、早い段階でどの女の子を攻略するか決めるわけですね。

宅本:そうです。そしてそれぞれのルートを進んでいくことになるので、いわゆる共通ルートが短いんですよ。主人公は社会人で、会社に辞表をたたきつけるところからプロローグが始まります。そこでヒロインと出会うわけですが、そのヒロインごとに主人公の次の仕事も変わるし、住む場所も変わります。そうすることで、より主人公とヒロインの関係に寄り添った物語を描けるのではないか、という考えによるものです。

―――プロローグが終わると、5本の別の物語が用意されている感覚でしょうか?

宅本:そういう感覚はあります。共通ルートも少ないですから、別ルートをプレイすると、新鮮な気持ちになれるんじゃないでしょうか。フルコンプしやすいゲームになっているんじゃないかと思っています。それが最終的な満足度に繋がってくれるといいですね。

―――作品の公式サイトで「どんな恋愛がしたいですか」というボタンがあるのも、作品の内容を反映させているからなんですね。

宅本:そうです。今回は出会い系サイトを意識しました(笑)。「どんな恋愛をしたいか」を選ぶと、それにふさわしい女の子が紹介される、みたいな。SMEE作品は「二次元の女の子とヤりたい」をかなえるゲームなので、実際のそういうサイトの見せ方は参考にしたりします。『フレラバ』や『ピュア×コネクト』ではキャバクラのHPを参考にしたりもしました。もちろん美少女ゲームファンに受け入れらすいようにオブラートに包んでいますけど。

ユーザーにより能動的にゲームと二次元ヒロインに関わってほしいという思い

―――『Making*Lovers』のこだわりは?

宅本:我々の「二次元萌え」のこだわりは、実在しそうな女の子を二次元的に表現するところにあるので、どうしてもキャラ等身は高くなるのですが、それは今のエロゲーの流行りと逆なんですよね。なので、そこのバランスをどうとるかに苦心しています。システム的には「デートメイキングシステム」です。システムと言っていますが、選択肢込みの演出ですね。主人公がデート先をヒロインと会話しながら、「どこに行きたいのかな?」と考えて選ぶのですが、そこでデートが失敗してもヒロインが主人公をフォローしてくれるんです。このようにヒロインが主人公に好意を持っていることを演出することで、よりヒロインに感情移入しやすくなると思っています。だから、このシステムのキモは「失敗すること」なんです。

―――好感度を上げたり正しいルートへ進むための選択肢ではないんですね。

宅本:はい。間違っても物語の本筋には影響ありません。こういう選択肢はこれまで無意味な空選択肢って言われてきましたが、それは違うんです。ヒロインとの距離を感じられる演出としての選択肢なんです。実は本作で一番力を入れている部分なんですよ。

―――そこはテキストで演出することもできますよね。

宅本:それだとユーザーは受け身のままですよね。ゲームなので、もっと主体的にヒロインと関わってほしいと思うんです。ゲーム内の主人公とヒロインではなく、プレイヤーとヒロインの距離が縮まると考えています。プレイヤーが能動的に参加することでヒロインのかわいさを感じられるというのは、萌えゲーには大事な要素だと考えています。

―――販促展開も教えてください。

宅本:10月中に体験版を出したいと考えています。月末だと新作ゲームで忙しくなるので、もう少し早めを狙っていますね。あとは発売後ですが、グッズ展開なども考えています。今回は公式サイトをオープンした時に情報を一気に公開したのと、ヒロインを知ってもらうためのプロモーション版というものを早めに出したので、予約の動きなどもいい感じになっています。

―――10年を迎えたSMEEの今後の展望も教えてください。

宅本:ゆっくりペースで長くゲームを作り続けられればいいんですが(笑)、まずはSMEEの目指す「二次元ヒロイン萌え」の表現を進めていきたいですね。そのためにはプログラムから一新させていかないとダメかな?と考えています。最終的にはADVゲームを進化させていきたいと考えています。もっとプレイヤーが世界に入り込めるようなゲームデザインができれば、より興奮できる作品になるのではないかな、と。ユーザーさんの発想で様々な遊び方ができるゲームデザインができれば、と考えています。