『アマカノ』シリーズや『アイカギ』で人気を博したあざらしそふとが、新レーベル・あざらしそふと零を設立。9月29日に第1弾となる『ヤミと祝祭のサンクチュアリ』を発売する。本作は、シリアス系の伝奇系作品で、これまでのあざらしそふと作品とは異なる方向性を持つ。なぜこのタイミングでこれまでと方向性の異なる新レーベル設立なのか。ディレクターのあおきゅん氏にお話を伺った。

取材にご協力いただいたディレクターのあおきゅん氏。『アマカノ』シリーズや『アイカギ』も手掛ける中心的存在だ。

伝奇系作品への挑戦

ブランド あざらしそふと零
定価 9,504円
発売日 2017/09/29
メディア DVD-ROM
ジャンル 神話が息づく島で紡がれる学園伝奇ADV
原画:神剣桜花、まろたろ(SD原画)
シナリオ:桐月、温泉大祐
 

数多の怪異、絡まり合う人々の思惑

姫神亜梨栖は、本土から遠く離れた新座島の神坐学園で消息を絶った姉の行方を調べるため、幼馴染の宗司と共に学園へと赴いた。その学園には奇妙なルールがあり、そのルールはこの島に秘密があることを確信させるには十分だった。二人は次第に島の真実へと近づいていく。そこで待ち受けていたのは、説話として語られる数多の怪異。絡まり合う人々の思惑と、その影に身を潜めた 人に在らざる者たち。全てが交わる時、運命が動き始める――。
 

シリアスの度合いを高めた新レーベル「あざらしそふと零」

―――9月29日発売の『ヤミと祝祭のサンクチュアリ』は新レーベル「あざらしそふと零(ゼロ)」からのリリースになります。新レーベル設立の理由をお聞かせください。

あおきゅん(敬称略/以下同):あざらしそふとのブランドコンセプトとして、「ヒロインの魅力やかわいらしさを最も重視した学園もの作品を作る」ということがありました。ただ、『ヤミと祝祭のサンクチュアリ』はシナリオに比重が重く置かれているので、「ヒロインの魅力やかわいらしさを最も重視」からは離れているのかな、と考えてレーベルを分けたということです。

―――あざらしそふと零を発表したとき、ユーザーの反応はいかがでしたか?

あおきゅん:実は新レーベルに関してはエイプリルフールに下地を作っていたんです。今年の4月1日の更新で3つのレーベルを発表したんですね。その中にあざらしそふと零も入れておいたんです。「エイプリルフールのネタだろう」と思わせておいて、実はひとつだけ本物でした!という感じで。結果的にお客様には「あれ、本当だったんだ!?」と驚かれながらも、すんなり好意的に受け入れられたようです。

―――そんなあざらしそふと零の第1弾『ヤミと祝祭のサンクチュアリ』ですが、この企画がまとまった経緯を教えてください。

あおきゅん:企画のスタートに関しましては、かねてより自分がファンだったシナリオライターの桐月さんにお仕事を打診したところから始まります。ただ、その時はほかのお仕事でスケジュールがいっぱいとのことで、「時間がかかっていいのであれば」ということでお受けいただきました。

―――桐月さんと言えば、これまで他ブランドで数々の人気作を手掛けられていますね。

あおきゅん:実は私は『黄昏のシンセミア』(あっぷりけ)が大好きなんです。2010年の夏に発売されてすぐにプレイしたんですが、その時の会社の日報に「今年の萌えゲーアワードの大賞はこの作品だ!」って書いたくらいで(笑)。

―――実際に『黄昏のシンセミア』は萌えゲーアワード2010で大賞を受賞されました。

あおきゅん:そうなんですよ(笑)。それでぜひ桐月さんと一緒にお仕事をしたいと思っていて、それが今回実現した形ですね。『ヤミと祝祭のサンクチュアリ』に関しましてはこちらから作りたい方向性をお伝えして、それをもとに企画原案から考えていただきました。2015年2月に企画はスタートして、制作を少しずつ進めてきたんです。結局発売まで2年半かかってしまいましたが、納得できる作品になったと思っています。

シリアスな伝奇系作品ならではの見せ方を追求しての挑戦

―――そんな『ヤミと祝祭のサンクチュアリ』のセールスポイントを教えてください。

あおきゅん:やはり桐月さんといえば「キャラクターを主体とした伝奇作品」という部分が高く評価されていると思います。ですので『ヤミと祝祭のサンクチュアリ』でもそういった部分を意識して作っています。それと、これは私が桐月さんのシナリオで好きな部分なのですが、キャラクター同志の魅力的な掛け合いですね。その部分は本作でもかなり力を入れてもらっています。

―――シナリオに比重を置いたブランドというのが伝わってきますね。メインビジュアル等などを見ても、これまでのあざらしそふと作品とは一味違う印象があります

あおきゅん:このあたりもどう見せていくかは考えました。どういう絵柄にしたら作品を効果的に伝えられるかって、やってみなければわからない部分もありますからね。ただ私は、やってみなければわからないのであれば挑戦的なことをするべきだと考えているんです。そうすることで、失敗しても次につなげられますから。今回のビジュアルにしても人気の『アマカノ』と同じ方向性にすることもできました。そのほうが安全という考え方もあります。でも、それだと得られる経験は少ないですよね。なので、今回はあえて違う方向のビジュアルを提示して、ユーザーさんからどのような反応をいただけるかを見ています。

―――確かに伝奇ものという作品内容を考えれば、『ヤミと祝祭のサンクチュアリ』のビジュアルは非常に印象的です。ただ、『アマカノ』で成功しただけに、そこから離れる怖さのようなものもあったのではないでしょうか?

あおきゅん:実はそういった怖さを感じたことがないんですよ。私はむしろ何かしらの刺激が欲しいタイプなんです。同じことを続けると退屈しちゃうんですよね。もちろん『アマカノ』は支持してくれるファンがたくさんいますから、あの世界観を壊してはいけないと思っています。でも、そういう作品があるからこそ、他作品では新しいことに挑戦したくなる。もちろん成功はほしいのですが、失敗して得るものも大事だと思っています。挑戦したからこそ得られるステータス値もあると考えていますから。

―――その挑戦のひとつとして、『アマカノ』とは方向性の異なる『ヤミと祝祭のサンクチュアリ』であるということですね。

あおきゅん:『アマカノ』は私の考えるエンターテインメント要素をふんだんに盛り込んで、プレイした人に「癒し」を感じてもらえるようにと作った作品でした。それが多くのユーザーさんに受け入れてもらえたわけですが、だからと言って同じような作品ばかりを作っていては、いつかユーザーさんに飽きられて行き詰まってしまいます。そうなる前に本作のような作品を出して、あざらしそふとの多様性を知ってもらう。そうすることで長く楽しんでもらえるブランドになれると考えています。

―――なるほど。とはいえヒロイン造形はあざらしそふとの大きな魅力で、それは本作でも変わっていませんね。

あおきゅん:今回のキャラクター作りは、桐月さんの考えたヒロイン像を絵にしていくという流れでした。姫神亜梨栖は主人公の相棒になる存在ということでキャラクターを作りました。綺堂悠里は小動物的な魅力を持った女の子だったので、そういうかわいらしさを意識したキャラデザインですね。ユーリエ・フォン・フェルトベルグについては不思議な雰囲気を持つヒロインですので、ちょっとつかみどころのない不思議な女の子ということでデザインしました。クローデット・ベルフラウはお嬢様という設定がありましたので、わかりやすいお嬢様ヒロインを意識しています。

―――ヒロイン造形でのこだわりは?

あおきゅん:新レーベルとはいえあざらしそふと作品なので、胸の大きさにはこだわりました。やはりそこは外せませんから。

―――ヒロインといえば、公式HPのヒロイン紹介ページに誕生花が書かれていますよね。これはどういう意味があるのでしょう?

あおきゅん:そこはユーザーさんにも訊かれたのですが、ヒロインをよりイメージしやすくしてもらえるように設定しました。物語に直接関係はしていないんです。

―――そのほか、本作でのこだわりをお聞かせください。

あおきゅん:背景ですね。シリアスな内容ですので、ユーザーさんが世界に入り込みやすいようにと緻密な背景は意識しました。

―――とてもリアルな背景美術ですよね。舞台となる新座島にはモデルとなる場所があってロケハンなどをされたのでしょうか?

あおきゅん:伊豆諸島にある青ヶ島をイメージしています。ただ、厳密に舞台のモデルにしたというわけではないので、ロケハンなどには行っていません。作品の舞台などの情報などは公式HPの「新座島観光局」というコンテンツで紹介しています。

―――その公式サイトですが、基本的に1ページで見られるデザインですよね。

あおきゅん:これは『アマカノ+』からの試みなのですが、最近は美少女ゲームのHPもスマートフォンやタブレットで閲覧するユーザーさんが多いので、1枚で見られて重くないデザインを意識しています。

―――広報展開についてもお聞かせください。

あおきゅん:やはり体験版ですね。『ヤミと祝祭のサンクチュアリ』は、作品の雰囲気や物語の方向性が見えない状況で購入するのは難しいと思いますので、8月の後半には体験版は出したいと考えています。

―――本作以降もあざらしそふと零での展開は継続されるのですか?

あおきゅん:もちろんです。次の企画もある程度形は固まっています。こちらはさらにシリアス度が高い作品になりますので、そこで驚かれないように『ヤミと祝祭のサンクチュアリ』をあざらしそふと零の1本目にしたというのもあります。ぜひ今後の作品にも期待してほしいですね。

『アマカノ』と『アイカギ』にも新展開。来年までの作品展開に注目!

―――もちろんファンも販売店も、あざらしそふとの今後にも期待度は高いと思います。

あおきゅん:あざらしそふとのほうは『アマカノ~Second Season~』のファンディスクである『アマカノ~Second Season+~』を12月22日に発売します。こちらは8月25日に公式サイトのオープンと予約を開始します。それと、『アイカギ』のアフターストーリー作品の制作を進めています。

―――『アマカノ2S+』はどのような内容に?

あおきゅん:『アマカノ+』と同じく、夏を舞台にしたヒロインとのアフターストーリーに加えて、ヒロインと二人きりの生活を盛り込んでいます。実は『アマカノ+』は重要なイベントが多く、日常をあまり描けなかったんですね。その反省から、『アマカノ2S+』では同棲や新婚生活など、二人で過ごす日常シーンに力を入れています。実はこれ、『アイカギ』で好評だった部分でもあるんですよね。そこをうまく取り入れています。

―――『アイカギ』についてはいかがですか?

あおきゅん:こちらはまだ開発決定の段階なのですが、来年までの展開も考えています。ぜひ続報をお待ちいただきたいですね。

―――期待しています。

あおきゅん:実は私、口が軽い方なので、イベントなどで質問されるとつい喋っちゃうんです(笑)。この秋はCharacter1にも参加しますので、ぜひ遊びに来ていろいろ質問してください。新レーベルも増えまして、スケジュールも来年まで決まっています。今後のあざらしそふとの展開に期待してください。