アストロノーツ・シリウスとアストロノーツ・コメットという二つのレーベルで作品展開を行なうアストロノーツ。最新作『百花繚乱ノ館』はクラシカルな本格館ものADVだが、館ものならではの魅力を「今のユーザーに届く」作品作りと販促展開を強く意識している。そんな『百花繚乱ノ館』の魅力を、アストロノーツ・シリウスの作品作りへのこだわりと共に、本作ディレクターの桐生タツヒコ氏にお話しいただいた。
 

取材にご協力いただいた桐生タツヒコ氏。長年、美少女ゲーム開発の第一線で活躍し続けているベテランだ。

ブランドカラーを活かした“館もの”

ブランド アストロノーツ・シリウス
定価   10,584円(初回限定版)
発売日  2017/7/28
ジャンル 人里離れた洋館を舞台に繰り広げられる官能と陰謀の『館もの』ADV
原画   M&M

旧華族の豪邸で行われる“影供の儀”

民俗学のゼミに所属する青山芳人は、人里離れた山中で道に迷い、とある洋館にたどり着く。そこは旧華族・神門家の所有する豪邸。客人として逗留を許された芳人は、神門家の次期党首を決める「影供の儀」に参加することになる。男と女の欲望が交錯するこの館で、芳人を待ち受ける運命とは……?人気原画家M&Mの美麗かつ淫靡なCGも魅力の、アストロノーツ・シリウスが贈るクラシカルで淫靡な本格館ものADVだ。

「アダルト重視」「ダーク/シリアス系」「ゲーム要素あり」

―――最初にアストロノーツを立ち上げた経緯を教えてください。

桐生(敬称略/以下同):前職で同じチームだった面々が独立する形で設立しました。中心となったのはディレクターの私と、同じチームのグラフィッカーやシナリオライターなど数人です。

―――アストロノーツという名称の由来、そこに込めた思いなどをお聞かせください。

桐生:宇宙にちなんだ名前ってかっこいいよねと、けっこう安直な理由からチョイスしました。『新たな未知の世界に挑むチャレンジャー』という意味をこめています。

―――2012年にアストロノーツ・シリウス、アストロノーツ・スピカ、アストロノーツ・アリアと3ブランドが続けてデビューしています。これは当初から計画されていたのですか?

桐生:いえ、ブランド創立時はシリウスのみで考えていました。ただ、最終的にスタッフが結構な人数集まりまして……。複数ラインでないと会社として成り立たないということになり、その結果としての3ブランド連続デビューになりました。

―――当初、3つのレーベルはどのような作品の方向性を考えて設立されたのですか?

桐生:当時在籍していた原画家およびほかのスタッフのカラーに合わせました。シリウスは原画家のM&Mがすでに多くのタイトルをリリースしていましたので、それに沿った『アダルト要素重視・ダーク/シリアス系・ゲーム要素もあり』というブランドカラーで現在も続けています。

―――ブランドカラーについてそれぞれ、詳しくお聞かせください。

桐生:「アダルト要素重視」は原画がM&Mということでユーザーさんから期待されている部分でもありますし、M&M自身もアダルトを売りで描いている原画家なので、そこを作品作りの中心に置かないでどうする、ということはあります。M&Mのようにデビュー以降長いスパンでコンスタントに作品を出し続けてきた原画家は少ないと思います。それだけファンの方に支持されていることなのでしょうが本人も毎作品、進化できるように努力している結果だと思います。

―――では「ダーク/シリアス系」へのこだわりという点は?

桐生:これについては、スタッフ全員がそういう作風のゲームが好きであるということと、やはりM&Mの絵柄が等身高めでアダルトな雰囲気があるということで、ダーク系、シリアス系の作品にマッチするのがあります。もちろんもっとポップにふることもできると思うんですが、現在そちらはアストロノーツ・コメットでやっています。

―――そして「ゲーム要素」についてです。

桐生:これも言ってしまえば中の人間が好きだからなんですが(笑)。昨今、美少女ゲームに限らず、コンテンツ業界全体に「手軽においしいところを楽しめる」という流れがあると思います。でもパッケージゲームだからこそ、「じっくり長いスパンで楽しめる」というゲームが作れると思いますし、それを求められているユーザーさんもいると思います。それが故のこだわりでもありますね。

―――その後、2014年にアストロノーツ・コメットが立ち上がります。これはどういう経緯だったのでしょうか。また、ブランドの方向性などもお聞かせください。

桐生:これまでグラフィッカーだったスタッフが原画に挑戦するということで、新たに立ち上げたブランドです。当初は原画家としての生産性も未知数でしたので廉価タイトルから始め、その後フルプライスタイトルを出せるところまでこぎつけました。ブランドのカラーはシリウスよりもライトなイメージですね。

―――シリウスとコメットでは、ユーザー層にも違いがありますか?

桐生:アストロノーツ・シリウスが高めです。M&Mをずっと応援してくれている方も多いですし、作風もあるので、30~40代が中心ですかね。アストロノーツ・コメットはもう少し若い層が中心になっています。

クラシカルな館ものを現代風にアレンジして送り出す『百花繚乱ノ館』

―――それでは、ここからはアストロノーツ・シリウス最新作『百花繚乱ノ館』に関しましてお聞きしていきます。なぜ今回は館ものをリリースされたのでしょう。

桐生:M&M原画による館もののタイトルはこれまでにもいくつか開発してきましたが、その中で『こうしてみたい』というネタがいろいろと貯まってきましたのでそろそろいいかな、ということで開発に至りました。

―――『百花繚乱ノ館』の企画コンセプトをお聞かせください。

桐生:クラシックな『館ものADV』をあえてこのご時世に、というコンセプトですね。人里離れた館に集った怪しげな登場人物たち、次々と起きる事件や様々な謎……といった、『これぞ館もの』という要素を詰め込んでいます。こういった雰囲気の作品は、昨今ですとホラーゲームが主流になっていますよね。でも、もともとはアダルトゲームが得意とするジャンルでもあったんです。M&Mをはじめスタッフもその時代の美少女ゲームが好きだったこともあって、もう一度そこでやってみよう、と。「18禁だからこそできる館もの」──淫靡さ、インモラルさが出せるように制作しております。

―――大まかなあらすじの解説、ストーリー部分での見どころをお聞かせください。

桐生:とある事情で人里離れた山奥の洋館に迷い込んだ主人公。その館は莫大な資産を持つ旧華族の名家、神門家の所有する豪邸だった。主人公は館への逗留を許され、さらに神門家の次期当主を決める『影供の儀』に参加することに……というあらすじです。物語の主役となるのは神門家の三姉妹の絢・百合・莉理香とその母史華です。主人公の行動によって、彼女たちは様々な運命を辿ることになります。

―――今回も魅力的なキャラクターが多数登場しますが、それぞれのキャラデザインのポイントなどをお聞かせください。

桐生:メインヒロインの莉理香は謎めいていて、館の中でも特殊な立ち位置にいます。三姉妹の末っ子ということで今回の儀には参加していません。キャラ造形としてはM&Mの描く女の子の、特にユーザー評価の高い部分を現代風にアレンジした感じです。長女の絢はいかにもなお色気お姉さんですが、その外見からすると意外な一面も持っています。M&M描くところの妖艶お姉さん系ヒロインですね。エロいけど、大人と娘の間といった雰囲気が出せればと思っています。次女の百合はいかにもな典型的高飛車お嬢様。館と神門家の異常性を分かりやすく示しているキャラクターです。三人の母である史華は館の現当主という立場ではありますが、物憂げで儚い印象を与える女性です。実は当初は厳格で威圧的な女主人というイメージをしていたんですが、M&Mから上がってきたデザインが儚げな美女で、これはこれでイメージに合うな、となりまして。それで現在の史華になりました。

―――公式サイトではマップの画像も紹介されています。ゲーム性、攻略性などはどれくらい盛り込まれているのでしょうか。

桐生:システム自体はマップ画面で移動場所を選択して進めていく、というオーソドックスなものです。難易度は一通りのメインルートを進めるのはそれほど難しくないですが、全てのイベントやサブルートを見ようとするとちょっと苦労する、くらいのバランスで調整できればと考えています。

―――そのあたりも「クラシカルな館もの」というこだわりですね。

桐生:そうなんですが、あの頃の館ものADVというのは、ほとんどノーヒントで、セーブ機能を駆使してトライ&エラーを繰り返しながら進めるゲームでした。でも、今のユーザーさんにとっては難しすぎると感じられてしまうかもしれない。でも、マップ上に登場するヒロインのアイコンを表示して、それを選んでいけばエンディングまで進むというのでは、攻略要素のあるADVとしての魅力に欠けてしまう。そこのバランス調整の部分で頭を悩ませています。

パッケージを重視しながら、今日的なユーザーニーズを見据えた販促&販売展開を

―――それではここからは販促、告知展開につきましてお聞きします。今作のサイトの紹介ページ・デザインは、これまでとはちょっと違った印象を受けます。何か狙いがあってのデザインなのでしょうか。

桐生:最近はパソコンでウェブ情報を見るのではなく、スマートフォンやタブレットなどでサイトを見る方も増えてきたので、それに対応するためにデザインしました。

―――GALLARYモードでCGを見ると、シーンのセリフも表示されます。これは『聖エステラ学院の七人の魔女』でも行われていましたが、なぜセリフを入れたのでしょう。

桐生:ビジュアルだけだとどういう場面か伝わりにくいかな、と考えてセリフを入れています。特に『聖エステラ学院の七人の魔女』や『百花繚乱ノ館』のようなADV作品は物語やシチュエーションがわからないとCGの魅力も伝わりにくいと思いますので。

―――ゲームのムービー、体験版などを公開する計画はございますか?

桐生:いつもでしたら体験版はマスターアップ後の公開なのですが、今回はそれより早めに体験版を公開する予定です。昨今、ユーザーさんがぎりぎりまで予約をされない傾向にあって、販売店さんとしても数字を読むのが発注直前になる傾向がありますので、少しでも早くユーザーさんに判断してもらおうということで、早めてみました。6月中には公開したいですね。

―――それではアストロノーツの今後の新作展開のご予定など、お話しいただける範囲で結構なので、お聞かせください。

桐生:『ダンジョンオブレガリアス』から『百奇繚乱の館』まで少し間隔が開いてしまいましたが、その間にもう1タイトルの開発を進めていました。こちらはそれほど間を開けずに発表できればいいな、と考えておりますのでどうぞお楽しみに!

―――従来のライン以外でも、こんなゲーム作り、こんな展開をしてみたいというのがあればお聞かせください。

桐生:市場的には厳しい状況ですが、今後もパッケージで作品をリリースし続けていきたいですね。また、その一方でダウンロードやオンラインも視野に入れていろいろと模索しておりますが……こちらは形になるのはちょっと先になりそうです。