2006年に設立された株式会社ホークアイは、みなとそふとブランドを中核に、デビュー直後から美少女ゲーム市場に大きな影響力を発揮してきた。その間にアニメ原作や一般PCゲーム、そしてDL販売など、様々なアプローチを試みてきたことも注目に値する。そして今、2年後の発売に向けて、みなとそふとの最新作を開発中のホークアイ代表・タカヒロ氏と、広報担当のエスズ氏にお話を伺った。

▲お忙しいところ取材にご協力いただいたタカヒロ氏。イラストは「まじこい」のマスコット・松風。

真剣で私に恋しなさい!A

ブランド:みなとそふと
定価:10,584円
発売日:2016/12/22
メディア:DVD-ROM
ジャンル:武士娘恋愛ADV
原画:wagi
シナリオ:タカヒロ

DL販売されていたシリーズ5本をまとめた大ボリューム

2013年からダウンロード販売されていた『まじこいS』のファンディスク『まじこいA』。5本リリースされていたシリーズをまとめたものが本作だ。また初回特典として最上旭、武松など『A』シリーズで人気を集めたヒロインのミニエピソードも収録される。また「特装版」では、タペストリーやラフ・線画をまとめたマテリアルブック等が特典に。

「自分の作りたい作品を作る」ために会社設立

―――みなとそふとさんのブランドの立ち上げ理由を教えてください。

タカヒロ(敬称略/以下同)もともと自分はきゃんでぃそふとというブランドでゲームを作っていまして、色々と経験も積ませていただきました。そんな中で、自分の作りたいものときゃんでぃそふとの作品作りの中で、方向性の違いが生まれてきてしまった。そういう状況でゲームを作るのであれば、独立して自分のやりたいものを作るのが筋かな?と。

―――立ち上げ時のスタッフは、どのようにして集めたのですか?

タカヒロ:独立したばかりで余裕もありませんでしたから、心当たりのあった何人かに声をかけたんですが、正直最初は少人数でした。デビュー作『君が主で執事が俺で』発売後ですね、スタッフを増やしたのは。

―――タカヒロさんの中で「こういう作品を作っていくブランドにしよう」というビジョンはありましたか?

タカヒロ:『姉、ちゃんとしようよっ!』『つよきす』で評価をいただいたので、同じ様な作品を作っていこうとは考えていました。

―――どちらもヒット作になりましたが、当時としても珍しいジャンルの作品でしたね。

タカヒロ:特に『姉、ちゃんとしようよっ!』の頃は妹ゲーが全盛でした。そのタイミングだったので、逆にカウンターで受け入れられたと思っていますが、自分の好きなジャンル、作りたい作品を求めてくれている人がいるなら、今後も作っていこうと思っていました。それは今でも変わりませんね。「こういうソフトなら自分は買う」というゲームを作り続けています。

―――そんな中で10年、美少女ゲーム業界をどのようにご覧になられていますか?

タカヒロ:デビュー直後はイケイケでやってきたんですが5年目、2011年くらいから「厳しい状況になってきたな」とは感じていました。「今までと同じではダメだな」と一般ゲームを出したり、アニメに手を出したりと幅を広げてきた感じですね。

―――なるほど。

タカヒロ:2012年に出した『真剣で私に恋しなさい!S』でブランドとしてひとつの成熟期を迎えました。そこからは新しいことを試していく時期と考え、色々と種をまいていきました。

 

みなとそふとの魅力はキャラデザイン

―――『真剣で私に恋しなさい!』(以下、まじこい)シリーズは大きなコンテンツですね。

タカヒロ:そうですね。自分が一番評価されているのはキャラメイクだと思いますが、その基礎が完全にできたのがこの作品だと思います。実際にゲームだけでなく漫画などメディア展開も続いていますし、本作で培ったものは大きかったですね。もちろんそれ以外を評価いただける物もありますが、絵にしても声にしても、キャラの魅力をより深めるための要素だと思っていますから。よく「みなとそふとのゲームはストーリーゲーなのか? 萌えゲーなのか?」と聞かれるんですが、その質問には「キャラゲーです」って答えています。

―――しかし、キャラ要素を特化させることで、当然ですがターゲット層の幅は狭くなります。にもかかわらず、これだけの成功をおさめ続けているのはなぜでしょう?

タカヒロ:もちろん「強気なお姉さんキャラ」がメインなんですけど、サブキャラなどで登場人物のバランスをとっているからだと思います。これは『つよきす』で学んだのですが、強気なヒロインばかりだからこそ、ゲーム序盤は主人公の愉快な友達という存在が清涼剤になるんですよね。そこがあるからこそ、ヒロイン造形がニッチでも広く受け入れられるのだと思います。

―――その結果、ヒロイン以外でも魅力のあるキャラが増えていくんですね。

タカヒロ:ユーザーさんからのご意見で、「序盤のたくさんキャラが出てくるところが一番面白い」とか、「個別ルートに入るとほかのキャラが出てこなくなるのがさみしい」って言われてしまうんです(笑)。そこはちょっと反省すべきところですが、キャラ作りにこだわりがありますから、光栄なご意見だな、とも思っています。

―――『まじこい』の「Aシリーズ」ではDL販売も行っています。この企画はどのようにできたのですか?

タカヒロ:『まじこいS』が終わった時に、ヒロインが多くなりすぎてしまいました。この状況でFDを作るのは時間がかかりすぎるため、ヒロイン3~4人ずつ分割して出そうと考えたのですが、店舗で展開するのは難しい。そこで最後にまとめたパッケージ版を出すとアナウンスした上で、DLにしたらどうだろうか?と考えました。また、ちょうどDL販売が広まってきた時期で、うちとしても看過できないレベルになってきた。ならば「Aシリーズ」をDL配信することで、みなとそふとのファンにもDL販売を利用する環境に慣れてほしいという思いもありました。そんなタイミングでDMMさんからお声がけをいただいた、という感じですね。

サブブランド、広報展開、そして最新作について

―――ホークアイはみなとそふと以外にもブランド展開をされていますよね。

タカヒロ:みなとカーニバルですね。みなとそふとだけだと、どうしても発売間隔が長くなってしまうため、「私の企画で他のシナリオライターが書くサブブランドを作ろう」と設立しました。その時に『つよきす3学期』で評判の良かったさかき傘さんとお仕事ができることになって、自分が作るキャラを上手に動かす実績のあるライターさんにということで作ったのが『辻堂さんの純愛ロード』(以下、辻堂さん)です。

―――『辻堂さん』では秋葉原の電柱フラッグなど独自の広報展開も注目を集めました。

エスズ:広報展開を考えると秋葉原は外せない。さらに『まじこいS』ではTVアニメともあって、何か新しいアイデアはないかと代理店と相談していた時に電柱フラッグが出てきました。その他にも『まじこい』では市営バスのラッピング、『辻堂さん』では海の家など、様々な試みを行いました。

―――海の家は斬新なアイデアでした。

エスズ:あれは「ゲームの舞台が湘南だから海の家を出したいね」ってだけだったので(笑)、正直あそこまで盛り上がるとは思っていませんでした。江の島の海岸で、足掛け4年くらいやっていますね。コアなファンは、こういう企画に乗って盛り上がってくれるんだな、と実感しました。
タカヒロ:みなとカーニバルは来年に合同ファンディスクを出します。『辻堂さん』も人気ありますしファンの方に楽しんでもらえるものを出したいですね。

―――みなとそふとの今後はいかがでしょう?

タカヒロ:先日の10周年イベント「みなと魂」でも発表しましたが新作を制作中です、発売はまだ先ですが。『まじこい』にはこれまで頑張ってもらったので、それに続く作品ですね。みなとそふとらしさは生かしつつ、過去2作品とは違う内容になります。

―――先ほどお話に出たアニメや一般作品への取り組みなどはいかがですか?

タカヒロ:これに関しては、18禁ゲームが規制されたときにどうするか?ということを考えての取り組みでした。おかげさまでまだそういう状況にはなっていませんが、ノウハウや人脈を作っていこうという実験でした。もちろん18禁ゲームは続けますが、市場状況も厳しくなっていく中で、海外展開も含めて色々なことは想定していかなければと思っています。ただ、一般ゲームの次回作は今のところ未定ですね。今はみなとカーニバルのFDとみなとそふとの新作でいっぱいいっぱい。特にみなとそふとの新作はかなりの大作ですから。

―――現在の市場状況で大作というのはリスクも大きいと思いますが?

タカヒロ:自分の作りたいものを作ると大作になってしまうんです。ユーザーさんからも望まれているのもありますが、やはり自分が遊びたいゲームを作りたいですから。それでダメなら、そこで考えます(笑)。

―――そんな中で10年を振り返っていただいて、いかがでしたか?

タカヒロ:あっという間でしたね。クリエイター社長だからだと思うんですが「作っていたら10年たった」って感じです(笑)。
エスズ:広報的には宣伝媒体がどんどん変わっていったので、それに合わせた方法を考えていった10年でした。ゲームを遊ぶ環境も変わりましたから、そういうメディアに合わせた発信を考えていかなければいけないと考えています。新しいユーザーさんが何もしなくても入ってくる時代ではないので、一人一人のユーザーさんを大事にしていくことが大事になってくると思っています。今、成功しているメーカーさんは、ユーザーさんへの対応が丁寧なところが多いですよね。そういう部分を見習っていきたいと思います。
タカヒロ:作り手側としてもVRのような新しいものには興味があるんですが、実際に何ができるかわかっていないんです。むしろ、まだまだ2Dでやれることがたくさんあると思うので、そこで全力を出す感じですね。新しいユーザーに向けては『まじこい』の共通とヒロイン1ルートを無料で遊べる体験版を出しています。みなとそふとの作品を知ってもらえる場所を作っていきたいとは考えていますね。
エスズ:「みなと魂」でも若いファンが多かったですし、みなとカーニバルでは20代前半のユーザーさんが多いんです。もちろん以前からのファンも大事にしつつ、そうした若いファンにも楽しんでもらえるようにしていきたいですね。

―――それでは最後に、一言お願いします。

タカヒロ:近年美少女ゲーム業界が厳しい状況なのはご承知の通りなんですが、面白いソフトを作れば活性化できると思っています。そこにつながるように新作に全力投球していますので、よろしくお願いします。
エスズ:様々な販売方法が出てきている中で、店頭に集まってくれるのはコアなファン層だと思っています。新作ではそこも盛り上げられるように取り組んでいきます。