ninetailとdualtailの両ブランドを擁しているスタジオ九尾は、ゲーム性の高いやりこみ系作品作りでファンを獲得してきた。人気シリーズ『VenusBlood』の開発秘話を中心に、その作品作りへのこだわりを代表の鬼影姚二氏と、ディレクターのけ~まる氏にお話をうかがった。

▲取材にご協力いただいた鬼影姚二氏(左上)とけ~まる氏(右下)。イラストは『VB』シリーズのSDユニット風に描かれたもの

VenusBlood -RAGNAROK-

ブランド:Dual Tail 定価:10,584円
発売日:11月25日 メディア:DVD-ROM
ジャンル:拠点侵略&女神悪堕ち触手SLG
原画:いっせー、丹下ゲンタ、熊虎たつみ、椎咲雛樹、トシぞー、塩屋染(SD原画)、黒木一朗(SD原画)、丹下ゲンタ(SD原画)、他
シナリオ:あくまっこ、イルカ、みぃ。、tk

シリーズ初の試みも取り入れた正統後継作品

11月25日に発売される『VenusBlood -RAGNAROK-』は、「女神悪堕ち」と「拠点防御SLG」という、シリーズ人気の根幹であるシステムに加え、2012年に発売され、シリーズ中でも高い評価を得ている『VenusBlood -FRONTIER-』のストーリーをも継承するという、シリーズ初の試みも取り入れた正統後継作品。やりこみ系美少女ゲームとしてのdualtailのこだわりをさらに推し進めたSLG作品だ。

作り手の納得いく作品作りに こだわって立ち上げたninetail

―――ninetail、dualtailの両ブランドはスタジオ九尾の美少女ゲームブランドですが、その設立経緯を教えてください。

鬼影:もともとは別会社の美少女ゲームブランドとして立ち上がったんですが、その会社は、1990年代後半までの美少女ゲーム業界の作り方をしていたんですね。店舗で自社作品のコーナーを維持するために一定本数を出し続けて棚を確保するという。ところがWindows時代になって、美少女ゲームも単なるエロコンテンツとしてだけではなく、ゲームとしてのクオリティーが求められるようになってきたんです。毎月3万本売れる作品が数本ある中で、売れない作品を作るブランドはどんどん淘汰されていくようになった。そんな中で、古巣の会社は毎月のように新作をだして、棚を確保するというやり方を変えていなかった。もちろんそういう営業計画を立てて、スポンサーから資金を提供してもらっていたからでもあるんですが。
け~まる:あの頃は1本の作品を6か月くらいで作っていました。企画段階のものを含めれば常に3~4作は動いている状況でしたね。
鬼影:でも、そういう作り方で店舗のコーナーを埋めても、売れなければ返品されてきますよね。そういうことが続くと、作る側も疲弊してしまうんですよ。そんな中で、その当時のゲームの作り方で、内容的にも納得できるものを作りたい、という話になったんですね。それで、表ではこれまで通りの作品作りを続けながら、社長に「こういう作品を作らなきゃダメですよ!」と説得していったんです。それで社長からOKをもらって立ち上げたブランドが、ninetailなんです。
け~まる:そのデビュー作が2006年9月に発売された『機械仕掛けのイヴ』です。
鬼影:売り上げは今一つでしたけどね(笑)。ただ、これまで出したゲームとの大きな違いとして、ユーザーさんからの反応が大きかったんです。ユーザー満足度の高い作品を提供できたということで、次に繋がる手応えを得ることができて、2008年8月発売の『天ツ風』に繋がったんです。

―――順調に展開していったわけですね。

鬼影:ところがその頃、親会社がPCゲームからの撤退を決定するんです。それを契機に独立することになりました。自分たちのソフト作りに手ごたえを感じていましたし、流通さんから援助していただいたことも追い風になりましたね。これまで出したソフトのサポートも行うということで、ブランド名も譲ってもらうことができました。
け~まる:それが2008年10月ですね。『VenusBlood -CHIMERA-』をマスターアップしてすぐに引っ越しでした(笑)。

―――その時からninetailとdualtail、二つの軸でゲーム開発を進められていますよね。

鬼影:ninetailは1本のソフトをじっくり作っていくブランドで、大体2年に1本くらい出していきます。dualtailはもう少し短期間でゲームを出していくブランドです。最近では1年に1本ペースですね。ただ、どちらのブランドもテキストADVではなく、ゲーム性のある作品にしていくという共通点はあります。

『VenusBlood』の人気を確定した 「女神悪堕ち」というキーワード

―――dualtailの『VenusBlood』(以下VB)シリーズは人気を博し、今年11月には9作品目が発売されます。

鬼影:『VB』シリーズは当初、調教SLGとしてスタートしました。詰将棋みたいな調教SLGって言われていましたね。こちらも好評だったのですが、2009年発売の『-DESIRE-』開発中にリアルで監禁事件がおきまして、業界的に調教ゲームへものすごい向かい風が吹くことになるんです。それで否応なく新しいシステムに変えなければいけなくなったんです。
け~まる:実は毎回新作の企画会議で、企画アイデアを5つくらい提出するんです。その中に新たなシステムのものもあって、当初は「こういうのも今後はやっていきたいねえ。でも今回はいつもの調教SLGで」ってことになっていたんです。でも、それが作れないということで、急遽先送りした企画からシステムを持ってくることになったのが『-DESIRE-』だったんです。
鬼影:『-DESIRE-』でシリーズのシステムが変わったのは、そういう理由だったんですよ。ただ、新しいシステムにすることで、不安も大きかったんです。それで本数限定生産ということで、ユーザーの飢餓感を煽る戦術をとったんですが、あっという間に売り切ってしまって(笑)。あの機会損失は痛かったなあと反省しました。

―――それは残念でしたね(笑)。でも、結果的に『VB』シリーズはその後、押しも押されぬ看板タイトルになりました。

鬼影:システム面で一番大きかったのは、ヒロインの「悪堕ち」要素だったと思います。悪堕ちはこれまでもあったんですが、大体がエンディングで悪堕ちするパターンだったんです。
け~まる:実は1本目の『VB』でも悪堕ちはあったんですが、これはエピローグのひとつだったんです。それに対して「悪堕ちした後も見たかった」という感想はがきがあったのを覚えていたんですね。そこから着想を得ました。それと、先ほど言ったように「完全な凌辱はダメ。でも同意の上ならOK?」というような微妙な線引きが浮上するようになり、それを打開する意味で「悪堕ちしたヒロインが主人公に迫るのはアリだな」と(笑)。そこからシリーズで今に続く「女神悪堕ちシステム」が誕生したんです。

―――なるほど。結果的に、この作品がターニングポイントになったわけですね。実際にシリーズのブレイクを実感したのは?

鬼影:『-EMPIRE-』ですね。以前某メーカーの社長さんに「売上が5000本を超えると、ユーザーの口コミで広がるようになる」と言われました。それより少ない場合は、どんなに面白くても「知る人ぞ知る名作」になってしまう、と。実際に『-EMPIRE-』でその数字を越えたのですが、ネットの話題に上がるようになりました。評価サイトなどのレビュー数も増えましたし、それを見た人がプレイしてくれたのか、リピートも増えましたから。その結果、次作『-ABYSS-』の初動は、これまで経験したことのない数字でした。
け~まる:ただ、当時はTritailというブランドを動かしていまして、こちらが厳しかったんですよ。会社的には厳しい状況を『-ABYSS-』で生き延びた感じでしたね。
鬼影:それと弊社は小さなブランドなので、これまで弱点には目をつぶって、強い部分を伸ばす作り方をしていました。ところが『-EMPIRE-』でユーザー層が広がったところで、その弱点を指摘する声が多くなってきたんです。当時、多かったのが「これで絵が良ければ」という声。実は『-EMPIRE-』までは外部の方にキャラデザインをお願いして、社内スタッフが絵を描いていたんです。けれど、そういう声が増えてきたので『-ABYSS-』からはキャラデザインの方に原画の修正までお願いすることにしました。その結果、絵の評価も高くなりました。
け~まる:シリーズとしてやっていけるという手応えを感じたのはこのあたりからです。当初は触手凌辱でスタートしましたが、触手ものが流行っていた半面、そろそろ飽和し始めてもいたんです。そのタイミングで女神悪堕ちという要素を盛り込めた。そこから悪堕ちに代わるものを考えたときに、「腹ボテ産卵」と、生み出したユニットを使ったタワーディフェンス型のシステムを盛り込んだのが『-ABYSS-』です。正直、ユーザーに受け入れてもらえるか不安もあったのですが好評をいただきました。それで女神悪堕ちを継承する『-FRONTIER-』、腹ボテ産卵と拠点防御を進化させた『-GAIA-』、2つの軸が生まれたと思います。


最新作は過去作のストーリー継承 新し試みで広学dualtailの作品作り

―――そして11月25日に発売される『-RAGNAROK-』は、『-FRONTIER-』の後継作品という位置づけなんですよね。

け~まる:これまでのシリーズは世界観のみを継承していたんですが、今回は初めてストーリーも継承させました。『-FRONTIER-』がシリーズの中でも好調なセールスを出しており、ユーザー評価も高かったですし、実験的な試みという面もあります。もともとタイトルも『VenusBlood -FRONTIER-2』だったんですが、ナンバリングタイトルにすると「前作をプレイしていないから楽しめないかも」という不安をパッケージの時点でユーザーに与えてしまいかねないのと、ninetailで出した『GEARS of DRAGOON2』が前作『GEARS of DRAGOON』より数字を落としてしまったからです。まあ、こちらは市場状況もあったと思いますけどね。
鬼影:その意味では、『-RAGNAROK-』も新しい挑戦になってしまったんですよ。
け~まる:もちろんシリーズの人気である「女神悪堕ち」は抑えています。さらに悪堕ちさせるか否かでストーリーが変わるカオスルートとロウルートというのも、『-DESIRE-』以降のシリーズ作品のセールス・ポイントととして入れてあります。正直ものすごい手間なんですが、そこが評価されている部分だと思っていますので、外すことはできません。

―――シリーズは今後も続ける予定ですか?

け~まる:その予定です。すでに次の作品の開発もスタートはしていますよ

―――ninetailのほうはいかがですか?

鬼影:こちらは『GEARS of DRAGOON』もひと段落したので、新たな作品を作っています。ninetailはdualtailのように凌辱メインというより、凌辱要素とライトな要素を併せ持つので、シナリオのバランスがとても難しいんです。なので次の作品はシナリオに大きくテコ入れしようと考えています。

―――会社としての美少女ゲームへの取り組みは、いかがでしょうか。

鬼影:今後の市場次第ですね。このまま市場が縮小すれば、当然今までのような作り方や売り方はできないでしょうから。市場が拡大する可能性がないのであれば、ほかのユーザーがいるプラットフォームなどに挑戦することも考えなければいけないでしょうね。