単一タイトルのシリーズ展開は、よほど人気作でないと行わないのが美少女ゲーム業界。しかし2014年設立のあざらしそふとは、デビュー作『アマカノ』を積極的にシリーズ展開。しかもその展開は、開発初期の段階から決まっていたという。12月22日(金)には最新作『アマカノ+』も発売予定のあざらしそふと。そのブランドと『アマカノ』のこだわりや魅力をディレクター・あおきゅん氏に伺った。

▲取材にご協力いただいたディレクターのあおきゅん氏。あざらしそふとブランドの中心的存在だ。

アマカノ+

ブランド:あざらしそふと 定価:8,424円
発売日:2016/12/22 メディア:DVD-ROM
ジャンル:もっと甘えたがりな彼女と俺の純愛ADV
原画:ピロ水、茜屋(SD原画)
シナリオ:龍岳来

これからもずっと続く、ふたりの恋物語


大ヒットした『アマカノ』のファンディスク。ヒロインごとに二人きりで旅行する「夏編」と、二人のその後、結婚までを描いた「未来編」の2部構成となっている。また誕生日やクリスマスなど、特別な日にプレイするとその日限定のイベントが発生したり、実際の風景写真などを取り込んで、ヒロインと合成して記念写真も制作できるシステムも搭載。

作りたい作品実現のため あざらしそふとを設立

―――あざらしそふとは株式会社ネクストン傘下のブランドですが、あおきゅんさんが入社した経緯を教えてください。

あおきゅん(敬称略/以下同):経緯というほどのものはないんですが、僕はもともと文学小説家志望だったんです。でもデビューすることもできず、そんな僕を見かねた友人がネクストン社員で、ゲームのシナリオライターという仕事を教えてくれたんですね。それで最初は外部ライターとして働いていたんですが、紆余曲折あってライター兼スクリプターとして入社することになりました。

―――その後、ディレクターとしてあざらしそふとを設立されるわけですね。

あおきゅん:入社して4~5年目くらいの頃、自分の中で「こういうゲームを作りたい」というのが明確になりました。ただ、それをやるのに既存ブランドのカラーとは相容れなかったんです。そこで新ブランドを設立するしかない、という流れになりました。

―――「こういうゲームが作りたい」と明確になった経緯について教えてください。

あおきゅん:『アマカノ』でシナリオを描いている龍岳来さんとは以前から「こういうゲームを作りたいね」という話をしていたんですね。そういう中で龍岳来さんから「一緒にゲームを作らないか」と言ってもらえて。それがちょうど自分が作りたい作品の方向が明確になった時期だった。自分は直球の学園ものが好きで、これは龍岳来さんも一緒なんですけど、なかなかそういうものを作れるブランドがなかったんですね。実は『アマカノ』の企画を作ってくれたのも龍岳来さんなんですよ。だから僕一人だけでは、あざらしそふとはできなかったかもしれません、

―――その『アマカノ』はデビュー作ながら多くのファンを獲得し、シリーズ展開もされています。龍岳来さんの企画ということですが、どのように作品として固まっていったのでしょう?

あおきゅん:最初に見せてもらった段階では企画原案みたいな感じだったのですが、それでもすでにほぼ作品として固まっていたんです。内容面についても大きくいじる必要はないな、と。ただ、プロデューサーとしてこの作品を売っていくためには、なにか際立つポイントとなるものがほしいと思いました。「甘えてくれるヒロイン」というのは当初から決まっていたんですが、もう一つとしてリアルな舞台設定とそこでの生活描写というのを考えました。

―――というと、ロケハンに時間をかけたりされたのでしょうか?

あおきゅん:実は龍岳来さんのおばあさんが住んでいるのが豪雪地帯なんですよ。なので龍岳来先生も、冬場に豪雪地帯の生活を経験されているんですよね。『アマカノ』のまったりとした雪国での日常描写、これはユーザーさんからも好評いただいているんですが、龍岳来先生の実体験があるからこそのリアルさがゲームに反映されているのだと思います。そういうリアルな舞台設定の上に、直球の学園恋愛ものを乗せたのが『アマカノ』です。

―――確かに直球ですよね。

あおきゅん:僕自身がファンタジー的な要素のある作品があまり好きじゃないというのもあるんですが(笑)、企画とシナリオが龍岳来先生で原画家がピロ水さんと、スタッフに力のある人がそろいましたからね。余計な要素を入れなくても十分アピールできるという自信がありました。

ブランドスタートから決めていた デビュー作のシリーズ展開

―――その『アマカノ』ですが、翌年に『アマカノ Second Season』、そして今年『アマカノ+』とシリーズ展開されていきます。

あおきゅん:実は『アマカノ』の制作に入る前に、龍岳来先生とピロ水さんには「Second Seasonまで作ります」とお話ししました。デビューしてから次回作まで間が空いてしまうと、ブランド名を忘れられてしまうことってありますよね。それを避けたかったんです。

―――『アマカノ』がヒロイン3人で『アマカノSecond Season』が4人というのも、最初から考えられていたんですか?

あおきゅん:決めていました。一番の狙いとしては、1対1の恋愛を重視したコンセプトなので、ヒロインの数を絞って「彼女と恋愛するんだな」とユーザーさんに強く意識してもらいたかったんです。最初の作品でそのコンセプトが浸透すれば、2本目で通常の美少女ゲームと同じヒロイン数にしても、作品コンセプトは伝わりますよね。ただ、ヒロイン3人で通常のゲームと同じ価格では厳しいので、7800円という価格設定になりました。

―――確かにシリーズ人気を見れば、そのアプローチは正解だったように思えます。シリーズの施策として、公式サイトからのアペンドパッチ無料配信があります。これはどういう狙いからなのでしょうか。

あおきゅん:僕の好きなブランドのensembleさんがアペンド配布をやっているので、それを真似したんです(笑)。ファンとしてはうれしいですよね、おまけってお得感があって。それとアペンドのDLは新品を買ったユーザーさんしか対象にしていない、中古では落とせない仕組みになっているんですね。新品は明らかに中古より高いわけで、それでも新品ソフトを買ってくれた人に、差額分くらいのお得感を感じてもらいたかったんです。

―――なるほど。確かに新品商品を買ってくれる人は、一番のお客さんですからね。

あおきゅん:そういう人には、喜んでもらえることをしたいじゃないですか。今後もアペンドDL以外で何かできることがないか、考えていきたいと思っています。

 

『アマカノ』ファンが求める ファンディスクが『アマカノ+』

―――さて、12月22日(金)発売予定の最新作の『アマカノ+』ですが、こちらはどのような作品になるのですか?

あおきゅん:まずお話ししておきたいのは、当初作る予定ではなかったこと。『アマカノSecond Season』の次は別のゲームを出す予定だったんです。ただ、ユーザーさんから「続きの話をもっと見たい」という声が多数届きまして、これだけ求められているのに次の作品に行くのはおかしいのでは?と『アマカノ+』を企画したんです。

―――『アマカノ+』は『アマカノ』のファンディスクという立ち位置ですよね。

あおきゅん:そうです。なのでファンディスクとして僕が考える方法で作りました。まずは「主要スタッフの交代・追加はしない」。『アマカノ』と同じスタッフで、今まで以上のクオリティで作ることを考えました。そしてそのクオリティを実現するため、季節は夏に変えて、背景や服装差分などを新規に制作してあります。

―――『アマカノ』の魅力として雪国の温泉街があったと思うのですが、季節を夏にするのは勇気が必要だったのでは?

あおきゅん:いえ、けっこう軽く決めました(笑)。それに本編が秋から冬の作品だったので、「夏服や水着が見たい!」というリクエストも多かったんですよ。その「夏編」に加えて「未来編」として本編のアフターストーリーも盛り込んでいます。

―――それ以外にも、様々なコンテンツが盛り込まれていますね。

あおきゅん:例えばクリスマスやユーザーが設定した誕生日などに起動すると特別なお祝いコメントなどが表示されます。これは『アマカノ』がヒロインと1対1の恋愛を描く作品なので、それをより楽しんでもらうことを考えたものです。ゲーム発売の2日後がクリスマスイブなので、ぜひ発売日にそのあたりをプッシュしていただけると嬉しいですね(笑)。

―――アマカノシステム」というのは?

あおきゅん:ゲーム内の立ち絵や背景を自由に組み合わせられるものなんですが、PC内の写真なども使えます。ユーザーさんで聖地巡礼をされている方も多いので、ご自身が撮影してきた現地の写真にヒロインを入れ込めたら面白いかなあと。

―――こういうアイデアは、あおきゅんさんが考えるんですか?

あおきゅん:そうですね。制作意図を聞かれると困るんですが、ユーザーさんが楽しんでくれるかな?と思いついたものを作っていきました。デスクトップアクセサリーも、以前はファンディスクの定番だったのに最近はないですよね。僕はそれが寂しかったので入れています。売上に効果があるかはわかりません(笑)。

―――発売まで期間がありますが、何か販促展開で考えられているんですか?

あおきゅん:いろいろ考えていますが、コラボカフェはやりたいですね。弊社でも『戦国†恋姫X』(BaseSon)がコラボカフェをやって盛り上がっていたんですが、うらやましくて(笑)。冗談はともかく、ツイッターなどと連動して、盛り上がっていましたからね。あとは全国巡業もやってみたいんです。ただ、まったくノウハウがないので、主要都市8か所くらいを回ろうと考えて、現在各所に調整中です。詳細が決まりましたら告知させていただきます。

―――シリーズ展開されている『アマカノ』ですが、実際にユーザー評価は高いです。セールスポイントを改めて教えてください。

あおきゅん:ひとつは「懐かしさを感じる温泉郷でのゆったりと心地いい時間」。仕事などで疲れた時に安らげる癒しを提供できる作品であることですね。もうひとつは「ヒロインとの甘い日々」。タイトルが『アマカノ』ですから、鬱展開などなしに甘さに浸っていられる物語です。

―――では今後の予定を教えてください。

あおきゅん:まず来年ですが『アマカノSecond Season+』を作ります。その後の状況次第では、『アマカノ』シリーズが続いていくかもしれません。ここはユーザーさんの反応次第ですね。やはりあざらしそふとにとって『アマカノ』シリーズは大事なコンテンツですから、ユーザーさんに望まれているうちは続けていくべきだと考えています。スタッフも『アマカノ』に愛着を感じていますからね。また、別の企画も進行しています。こちらはタイミングを見て発表したいと考えています。