美少女ゲーム市場の問題のひとつとして、ユーザーに向けての広報メディアの確保は大きなテーマになっている。雑誌や販売店が減少している現状で、高まっているのはインターネットへの比重だ。しかし、スマートフォンの普及に伴い、ウェブページ閲覧をPCではなくスマートフォンで行なう人も増えている。そう下状況に対応するように、スマートフォンやタブレットを意識したウェブデザインを手掛けるメーカーが増加中である。


 HPデザインはもちろん、体験版配信も携帯端末に対応したアイデアを実現

美少女ゲーム市場で、ここ数年注目が高まっているのが、Androidなどのスマートフォン・タブレット端末だ。実際にDL版を制作して、配信を行なっているメーカーも増えてきている。それ以上に増えているのが、広報戦略としてスマートフォンやタブレット端末でメーカーサイトをチェックするユーザーに対するアプローチ。今回は、公式サイトのデザインを中心に、こうした携帯端末向けの販促展開を行なっているメーカーに話を伺った。

株式会社ネクストンは自社ポータルサイトのデザインをスマートフォン・タブレットに対応した形で公開している。この狙いについて、ネクストン広報・まくら氏は以下のように理由を説明する。
 
「ここ数年でタブレット・スマートフォンの普及が著しく進み、携帯端末でのウェブ閲覧が増えていると感じます。PCを所持している方をターゲットにしたPCゲームでもそれは同じで、ゲームをプレイするのはPCでもサイト閲覧はスマートフォンという方も徐々に増えてきています。そうした状況で、スマートフォン等でもストレスなく見られるサイトにすることは自然な対応だと思います。我々も市場・時代の変化に対応していかなければならないと常に感じています」
 
現在のユーザーのニーズに合わせたデザイン変更とのこと。なので、その効果についても「デザインを変えて閲覧を増やそう、というわけではなく、数が変化したからデザインを変化させた……という流れです」と前置きしたうえで、次の数字を示してくれた。
 
「ネクストン総合サイトNEXTON-NETの直近のアクセス割合を見ると、PCが約75%、スマートフォン等のモバイル端末が約22%、タブレット端末が約3%となっています。商品がPC向けであるが故にまだまだPCが一番ではありますが、4分の1がスマートフォン・タブレットで情報を得ているというのは数年前では考えられなかった状況です」
 
ニーズに即した販促展開の変更。実際にネクストンでは、ポータルサイトだけではなく、それぞれのブランドでもスマートフォン・タブレット対応のHPデザインを行なっているところがある。そうしたブランドの中から、あざらしそふと、とるてそふと、HERENCIAの3ブランドから、それぞれ担当者に理由を伺った。
 
あざらしそふとは、新レーベルあざらしそふと零から10月27日に発売された『ヤミと祝祭のサンクチュアリ』でも、携帯端末対応のデザインを行なっている。
「スマートフォン用のアプリゲームが充実している昨今、パソコンではなくスマートフォンで情報を得ているユーザーさんが多いと感じていて、スマートフォンで閲覧しているユーザーさんが、スムーズに閲覧できるように、あざらしそふとでも『アマカノ+』から、作品紹介ページを大きくデザイン変更しました。改良できる点はまだまだあると思いますので、今後もさらに、スマートフォンでの利便性を向上させたいと考えています」
 
とるてそふとのHPデザインは11月24日に発売される『あぶのーまるらば~ず』の販売スタイルとも関連している。
「とるてそふとでは、基本的にPC版とAndroid版の同日発売を行なっており、PC版、Android版共にタブレット、スマートフォンにも対応しておりますので、両方に対応したWEBの制作をしています。最近はタブレットのみ、スマートフォンのみのユーザーさんも増えておりますので、せっかく気にかけて頂いた作品でもプレイできない!というのをなくしていくのが目的としています。また、外などで友達と話をする際に、スマートフォンでサイトを見たときにPC対応のみですと、どうしても見辛いところがありますので、そういったところも考えてのものになります」
 
HERENCIAについては、以下のようなコメントが返ってきた。
「シンプルで見やすいモノを、という意図です。HERENCIAはマニアックなエロを作品コンセプトにしており、そこを押し出すにはシンプルが良いかなと考えました。それに加え、スマートフォン等で操作して見る時、分かりにくいとイライラしてしまう事が自身にもあったので、見やすくしたいなと考えました。その結果、上記の意図で作る事にしました。シンプルにした結果、華やかさ・凝ったデザイン性は他ブランドと比べると弱い部分もあるかもしれませんが、そのような中でもタイトルの雰囲気がしっかり伝わるように心がけております。後は、各製品ページのデザインです。マイナーチェンジこそあれベースは一緒なので、見やすく、分かりやすく、統一性もとれており、見た方に「どこ押せばいい?」みたいなストレスは与えないようしています」
 
また、Luxury Tiaraより5月26日に発売された『お嬢様の半分は恋愛で出来ています』では、体験版のブラウザ上でのプレイを可能にした。DLしないこのアプローチも携帯端末を意識したアイデアと言えるだろう。
「狙いとしては「ウェブブラウザからシームレスでゲームをプレイしてもらいたい」というものでした。やはり手間として「DL→解凍→インストール」という工程が煩わしく感じると思った次第です。公開後は「PCがない状況でもプレイが出来て良い」「わざわざPCを起動せずとも、気が向いた時に気軽にプレイ出来るのは嬉しい」といった声を多く見かけました。ソーシャルゲームが流行し、ユーザーがPCよりもスマートフォンに触れる機会が増えている昨今、この媒体を変えたアプローチは良い働きをしたのではないか、と実感しております」
 
ポータルとしてだけでなく、各ブランドもスマートフォン・タブレット対応を進めているネクストン。今後はどのような展望を描いているのだろうか。
「スマートフォン・タブレットの普及により、PCを持っていないという方も増えました。サイト対応は既に始めていますが、ユーザー様にとっての快適さ・気軽さを考えるとやはりゲーム自体をPC以外でも遊べるように工夫していかなければと感じています。前述のLuxuryTiaraで実施したようなブラウザ上で動く体験版といった試みを続けつつ、時代に合わせた形式というものを模索していく所存です」
 

 目に見えての流入は認められないながら、今後の広報には必要な展開に

アストロノーツ・シリウスでは、『ダンジョン オブ レガリアス?背徳の都イシュガリア?』と『百奇繚乱の館』でスマートフォン・タブレット対応のHPデザインを取り入れている。その理由について「PC以外でWEBを閲覧するユーザーが増えつつあることから対応を始めました」と答えてくれた。しかし、現段階では携帯端末に即したデザインをしたことでの流入効果などについては、「違いはほぼなかったという感じです」ということであった。

「実際対応していないページでも表示はされるわけですし。スマートフォン対応HPがデフォルトとなりつつある過程なので、来年くらいには対応していないのか?という声の方があがるようになるのではないでしょうか」という手ごたえだったようだ。

それを踏まえたうえで、11月24日発売の『艶花サクラメント』では通常のPC向けデザインを取り入れている。
「専属のWEBデザイナーなどの人員を割ければいいのですが、各チームのグラフィッカーがメインとなってHPデザインなどの作業をしておりますので。現状、作業時間も取れるわけでもなく、しかもスマートフォン対応は思った以上に時間がかかるため、今作品に関しては対応なしでいくことにいたしました」

とはいえ、今後もスマートフォン・タブレット対応の広報展開は行なっていく予定だ。
「SNSなどを絡めて展開していかないと、情報の拡散が難しい時代になりましたので、そのあたりも検討していきたいですね」
 

 新しいユーザーに向けたHPデザインと作品の魅力のアピールに注力

SMEEは11月24日に『Making*Lovers』を発売するが、この作品で、ブランドとして初めてスマートフォン・タブレット対応のデザインに取り組んだ。これについてディレクターの宅本うと氏は「携帯端末での閲覧を意識している」とはっきり語る。そしてそれ以上に、ゲームというよりも風俗サイトなど「女の子を魅せる」サイトを参考にしている。

「実は『Making*Lovers』のHPデザインは出会い系サイトを参考にした部分があります。SMEE作品は「二次元キャラのかわいさを追求」しているんですが、女の子のかわいらしさを見せる方法は現実にもたくさんあります。風俗系のサイトは、そのひとつですよね」

そうしたこだわりがあるだけに、公式HPの攻勢の仕方、見せ方にもこだわりがある。
「今の若いユーザーさんは美少女ゲームの固定概念に飽きてしまっていると思うんです。普通のHPを出したのでは、「またこういうのなんでしょ」って回れ右をしてしまう。むしろ「なんだこれ?」って引っかかるようなデザインにしないと興味すら持ってもらえないと思っているんです」

その上で、スマートフォン・タブレット対応を意識するのは「従来の美少女ゲームのHPが時代にそぐわないから」だと言う。
「やはりエロゲー業界全体が若返りを図らなければいけないところはあって、その一つがHPの見せ方だと思うんです」

そんな『Making*Lovers』のHPは「徹底的に女の子をアピールする」のが第一義。物語が独特だったり起伏があったりする作品ではない。「我々が見せたいのはキャラクターなんだ!」というのを徹底して見せていこうと考えました我々が見せたいのはキャラクターなんだ!というのを徹底したデザインというのを考えました」

新たなユーザーへのアピールはもちろん、従来の美少女ゲームファンも情報を仕入れる手段としてスマートフォンやタブレットという携帯端末が主流になりつつある今日、美少女ゲームメーカーのHPによる情報発信も、そうした携帯端末での見やすさを意識すべきであるのは言うまでもない。デザインはもちろん、体験版などの携帯端末でのプレイのしやすさなども、今後のテーマの一つと言える。最近増えてきている体験版のプレイ動画公開なども、そうしたアイデアの一つだろう。
果たして今後、どのようなアイデアが登場するか。各メーカーの公式サイト展開からは、まだまだ目が離せない。