美少女ゲーム関連だけでなく、幅広いコンテンツを元にしたグッズ展開を進める株式会社デジタルパワーステーション。会社設立時はパッケージの製造を主軸としていたが、時代の流れに合わせグッズ関連に注力。独自の商品を開発し、様々な話題を提供してきた。今回は代表取締役社長の下田氏にお話を伺い、同社の歴史から美少女ゲーム業界のグッズトレンドについてまとめていく


 2008年のリーマンショックが転機 パッケージからグッズへとシフト

デジタルパワーステーション(以下、DPS)の設立は1999年。最初はパッケージ製造が主軸の会社として始まった。
 
「当時はパッケージソフトが美少女ゲームに限らず隆盛で、ビジネスソフトも量販店に専用コーナーがあったくらい。一般向けのPCゲームも人気で、私が担当していたコーエーさんの作品だと、今だから言える話ですけど、現在の美少女ゲーム市場で大ヒットと言われる数字をリピートで出していましたよ」
 
「1999年から2000年台前半までが最盛期でしたね」と振り返るのはDPS代表取締役社長の下田氏。同じくパッケージ製造を行っていた会社から独立し、初年度から順調な経営を続けてきたが、2008年のリーマンショックから風向きが変わってきたと語る。
 
「我々の業界は娯楽産業ですが、世情の動きに左右されるんだなと実感しました。実は弊社的には2008年は絶好調と言える年だったんですけどね。年々、少しずつ数字が減っていったところに2011年の震災があった。さらにダウンロード販売が定着し始め、違法ユーザーの数も増えていきました。当時だと正規:違法が1:3くらいだったのか、今は1:10なんて話もお聞きします。2011年辺りと比較すると、今のパッケージ製造の規模は1/3くらいでしょう。さらに同業他社が参入してきて、デフレ傾向と相まって価格競争が起き、さらに厳しくなっていった訳です」
 
パッケージ製造が厳しくなっていく中、下田氏が注目したのは、事業の一つとして存在していたグッズ制作だった。
 
「当時もグッズはありましたが店舗特典が主流。それがイベントでも販売するぞ、とシフトしていったのが2012年あたり。美少女ゲームに限らず、エンタメ業界全体で変化していった時期です」
 
DPSの業務内容も変化していき、2000年中盤まではパッケージ:グッズの比率は9:1だったのが、2012年には4:6、そして現在は2:8と「会社の顔というかスタイルが完全に変わった」(下田氏)状態に。ただ、会社としての実績はあっても、グッズ販売では後発になる。既存メーカーに対抗するために、自社オリジナル商品を開発してきたのが下のカコミ記事で紹介しているグッズだ(ポケット色紙&キャンバス、シャペストリー)。
 
また、電気外祭りに協賛しているDPSは、イベントの度に新しい商品の発表も行っている。中でも話題になったのがPDM(ピー・ディー・エム)。“プロデューサー巻き”を略した商品名のグッズだ。
 
「セーターの背中にかけて袖をまくP巻きをして描かれた推しキャラをアピールするだけでなく、ひざ掛けに使ったり、イベントで買ったグッズを収納することもできる、多目的グッズですね。電気外祭りでは評判になって売上も良かったのですが、その場のお祭りアイテムとして消費されてしまった面もありまして。他業界はどうかなと、たまたまアーセナルの日本学校と縁があり、そちらに持ってところ大好評になった。ところが、いざ制作となると向こうのニーズとこちらの意図が合わず、保留中になっているのが現状です。ただ、商品自体は肯定されていますので、機を見て再開したいと思っていますよ」(写真・下)
 
なお、電気外祭りでの新企画発表は継続しており、「今夏も新しい商品を発表します」とのことだ。そして、これらのグッズを中心に実績を積み重ねたことが、今夏から始まるDPSのグッズブランド「TO HANDS」の設立に繋がっていく。
 
「これまでは受注生産が主でしたが、TO HANDSではライセンスを取得し、自社オリジナルグッズを販売していきます。第一弾のライセンス取得は完了していまして(取材は6月上旬)、7月末の公開に向けて動いている状態ですね。アニメイトでのイベントもありますし、TVCMも制作しております。新しい企画、TO HANDSならではの商品を揃えていきますので、よろしくお願いいたします」
 

 飽和状態の抱き枕と 融通の利くアクリル系

続いて美少女ゲームのグッズ展開は今後、どのように変化していくのか。これまでの流れを振り返って分析していただいた。
 
「グッズが店舗特典中心だった頃は、デジもの(CD等)と布もの(抱き枕・タペストリー等)が主軸でした。イベントでの販売にシフトする時期、A&Gさんがクオリティの高い抱き枕を開発してきたのは大きかった。我々のシェアを取ったというよりは、高品質な商品によって認知度が向上し抱き枕を購入するユーザー層が拡大したんです。利益率の高いグッズだっただけに、業界を救ってくれたとすら思っていますね。ただ、数年たつと他グッズ会社も研究するようになって全体のクオリティが上がり、また数も増えたため飽和状態になっていきました。とはいえ利益率の高い商品ですから、メーカー側も色々言われるとわかっていても外せないのが現状です」
 
布ものが落ち着いた時期に目立ち始めたのが缶バッジ、そしてアクリル系のグッズだ。
「特にアクリルはここ数年で伸びましたね。成長した要因の一つはコスト・納期を短縮できること、また小ロットからの生産が可能な点も大きいと思います。例えばこのキャラだけ多く作る、といった細かな対応もやりやすいんです」
 
グッズ展開が目立ち始めた2012年前後は抱き枕系が軸に。それが飽和してきた2014年前後からは缶バッジ、そしてアクリル系が目立ってきた。そしてこの傾向は、ユーザーの懐具合も反映されている。
 
「何年も前からユーザーが二極化していますね。高額でも購入されるユーザーと、安いグッズじゃないと手が出ないユーザー。前者は布ものでも大丈夫ですが、すべてのユーザーが購入できる商品とはならない。イベントに来たユーザーが何か購入していってほしいと考えたとき、アクリル系は融通の利く商品だと思います」
 
このような状況において、DPSでは新しい布もの企画としてシャペストリーを発表。アクリル系でもカコミ記事で紹介しているポケット色紙・ポケットキャンバスやICカードを入れられるケースを制作している。また、色紙をこのサイズで制作するのはDPSの独自技術とのことだ。
 

 ポケットキャンバス&色紙は企画意図に合わせて

葉書サイズで制作されたポケットキャンバスとポケット色紙は、使用目的によって使い分けることがポイントだ。
 
「キャンバスは生地を貼って水彩や油絵等を楽しむもの。美少女ゲームのキャラクターをアートのように鑑賞することができます。一方、色紙の方は例えばスペースに、配布会等で声優さんにサインを入れてもらう、コミュニケーションツールとしての楽しみ方があります」

キャラクターをアートのように楽しめるのがキャンパスの魅力(写真・左)。通常のキャンパスだと厚みがあって数を揃えると収納に苦労するが、ポケットキャンパスは厚さ3.5mmと複数所持がしやすい。
 
(写真・右上)「色紙はコミュニケーションツール」と語る下田氏。サイン会に使用したり、イベントの配布会で先着~名にプレゼントといった使い方も。よりコレクション性が強いのが色紙の特徴だ。
 
(写真・右下)スタンドを使用して鑑賞用に。サイズがコンパクトなので入れ替えや収納も楽だ。またアクリルケースに入れ鞄等にぶら下げることで、イベント等で自分の好きなキャラクターをアピール。

 バリエーションの増えたシャペストリー

等身大・B2・連結と3タイプ用意されているシャペストリー。昨年5月に発表、その機能性や色の良さは広く認知されたが、今夏はさらにアピールしていく予定。
 
「発表時期と水をはじくといった機能性もあって夏の商品というイメージが強くなった。販売数については問題ない数字でしたが、オールシーズン売っていきたい。2年目の商品ですが、新規の商材として改めて販売していく心づもりです」

定番グッズの一つ・抱き枕は、シャペストリーでも主要グッズになった。
「同人サークルでも生産したアイテムは全て完売しています。商品としては肯定されたと思いますので、さらに上を狙いたい」(写真・上)
 
B2サイズは店舗特典のサイズとして使われることが多い。使い勝手の良いサイズで、安定した人気商材となっている。また生産コストも比較的安価で、メーカーとしても手が出しやすいようだ。
 
そして昨年末に制作された2つのシャペストリーを連結させるタイプ(写真・下)。好みのキャラクターを並べてたり、シチュエーションを元にした組み合わせを作る等、ユーザーごとの楽しみが生まれる。