ゴールデンウィークを中心に、例年、美少女ゲーム関連イベントが充実する春。今年も大会場を使用しての展示会や、複数メーカーが協力してのライブ、またメーカー単独のイベントも開催された。その中で特に目立ったものを、5月特集記事として掲載していく。まず1回目は4月1日に開催された「OVERDRIVE 10th FES -LAST DANCE-」。OVERDRIVE代表・竹内氏への取材を元に記事をまとめていく。


 10周年記念ライブは入場無料

4月1日にティファ有明で開催された、OVERDRIVE設立10周年を記念してのライブ「OVERDRIVE 10th FES -LAST DANCE-」。デビュー作『エーデルワイス』から、同ブランドのほとんどの曲を網羅した4時間以上にわたるライブは入場無料(※ドリンク代のみ有料)という“フリーライブ”形式で開催された。その意図を同ブランド代表の竹内氏は次のように語る。

「OVERDRIVEやminktub等での活動を含めて、色んな形のライブは経験しているのですが、フリー形式はやったことがなかったんですね。数年前から10周年ライブのことは頭にありましたが、お手伝をしたある先輩のライブイベントが、クラウドファンディングを使ってのフリーライブで。その経験を通して、この形はやれるなという手ごたえが掴めた。美少女ゲーム業界では珍しい形式でしょうし、業界初という言葉も好きなんで、ウチらしくインパクトのあるものをとフリーライブを決定しました」

ライブの資金調達に活用したのが、竹内氏も語っているクラウドファンディング。OVERDRIVEでは2013年、『グリーングリーン OVERDRIVE EDITION』を開発する際、この仕組みを用い、成功を収めている。また竹内氏自身、個人や手伝ったものも含めると18案件をまとめ、資金調達の合計は1億7千万円にも達している。その経験を買われ、今では国内クラウドファンディング・プラットフォーム「CAMPFIRE」の顧問を務めているほどだ。
海外ではすでに始まっていたクラウドファンディングは、CAMPFIREが設立された2011年辺りから少しずつ国内でも浸透。コンシューマゲームでもいくつかのプロジェクトが発表・実行されてきたが、美少女ゲームを含めても、ゲーム系はまだ伸び悩んでいる印象だ。

「色んなメーカーさんとも議論しましたけど、やはり向いているメーカーとそうでないメーカーはありますね。あと美少女ゲームでいえば発売延期を繰り返しているようでは難しいですよ。クラウドファンディングは基本、“信用の前借り”ですから。あとお客さんと対話することも重要だと思います。我々はよくニコ生を使って、お客さんと対話しながらやれることを決めていく。一緒に楽しんでいく、というスタンスをとったことが、成功につながったとは感じていますね」

竹内氏は「この方法が全てにおいて正しいとは思わないし、クラウドファンディング自体も、あくまで方法論のひとつ」と強く語る。ただ、早期からこの手法に目をつけ、自分たちに合うやり方を導き出したことが、10周年になる活動に繋がっていると言えるだろう。
今回のライブも一緒に考え、一緒に盛り上がろうとの意図が、支援者へのリターンにも盛り込まれている。

「高額支援をいただいた方は、提灯に名前を書いて、ステージに飾らせていただきました。職人の方にもいい感じに作ってもらえたし飾りつけも綺麗で、支援した方も見ていて楽しかったと思いますよ。あと冗談で掲載していた800万円の超高額支援もあったのですが、申し込みはないだろうと思っていたら、一人だけ問い合わせがきまして。退職金も前借すれば…、と言ってきたんですけど、さすがにそれは止めなさいと説教しました(笑)」

4時間以上にわたる10周年ライブだが、代表である竹内氏は最初に挨拶でステージに立ったのみで、後は観客席に座っていた。様々なライブでステージに立ち、また先日行われた「B.G.M Live!!2017」では、“美少女ゲームの新人アーティスト”として歌も披露していたが、今回のライブには「自分の考える記念ライブに自分の出番はなかった」と語る。

「昔から演者としてステージに立ってきましたけど、10周年の節目を迎えたとき、やっぱり自分の作ったゲームって特別で、そのほとんどの曲が流れるライブは客観的に見たかった。自分の考える記念ライブに、自分が必要ないとも思っていましたし。今回の僕の仕事はライブの開場までです」

「色々やってきましたけど、自分が出ていないライブでは一番感動しましたね、やっぱり」と語る竹内氏。ライブではスマートフォン版の展開や、“最終プロジェクト”も発表された。その経緯や意図、またクラウドファンディングという手法については、インタビュー形式でお伝えしていく。
 

 “ユーザーと作り上げる”形で積み重ねたクラウドファンディング

―――クラウドファンディングを使っての活動もそろそろ4~5年になるかと思いますが、順調でしょうか?

竹内(敬称略/以下同):会社、個人、お手伝いを含めて18案件、トータルで1億7000万の資金調達を達成してきましたが、まだまだ模索中のところはあります。始めた経緯は流通や銀行から借金して制作するのではなく、自分たちで資金を回収する方法はないか、と考えたところから。やっぱり借金は嫌ですからね。この方法が絶対正義ってことは勿論ないんですけど、一つの方法論としてはアリなんじゃないかと思えるくらいにはなっています。その実験を、他会社にやらせるのは悪いので、自分たちでやっているって感じですね。

―――CAMPFIREでは顧問をされていると伺いました

竹内:先方からお誘いがありました。いわゆるIT業界ですけど、スピード感の違いには驚かされましたね。これは美少女ゲーム業界が取り残されるのも当然かなって。月に何回か出向していますけど、色々な方から相談を受けるんですがクライアントには最初に何でもいいからクラウドファンディングに参加するように言います。経験すれば専門用語も理解できるので、打ち合わせもスムーズになるんですよ。

―――わかるような気がします。

竹内:自分は基本的にキュレーターとして参加しています。クラウドファンディングの企画をチェックして、プロジェクトの設計や成功率を上げる方法を指導していく。実行するのは企画してきた人ですが、今もあるバンドのキュレーターをやっていて、“bamboo式メソッド”なんて言っていますけど(笑)、2000万円くらい集まりましたね。

―――日本だとあまり広まっていないイメージありますけど、サイトを見ますとけっこう種類あるんですね。

竹内:美少女ゲーム業界、同業者の方には、まず小さい企画から始めた方がいいと伝えます。大きい企画を進めて、それでコケたら大変ですから。この業界、応援してくれるお客さんは確実にいるのですから、彼らにはきちんと説明して、対話の手間を惜しまないようにすることも大事です。

―――ユーザーとの対話は欠かせないと。

竹内:そして支援してくれたお客様へのリターンはしっかりやる。支援してくれたお客さん至上主義と言いますか、それ以外のお客さんとの区別ははっきりとつけます。今回のライブだと、リターンでライブに使用した音楽を全て集めたCDボックスを制作しました。これを一般販売もしてしまうと、支援してくれたお客さんへの裏切りになるんです。僕らとしてはライブ開催自体が目的で、CDで利益が増えなくても全然かまわない。副産物で儲けようとかは考えません。儲けは当日物販や映像化など色々ある訳ですし。クラウドファンディングを成功させるには、お客さんとの厳格なルールを守る必要があるんです。

―――なるほど。

竹内:誰のために作るのかといえば、自分たちと期待しているお客さんのためですから。今回は、ライブ取材でお話していますけど、クラウドファンディングについては何時間でもお話できすよ(笑)。CAMPFIREの広報も出席してもらって、具体的な数字を出して話ができれば、よりわかりやすく伝わるでしょう。
 

 スマホ版を改めてリリース、“最終プロジェクト”も発表

―――現在、“OVERDRIVE10周年記念3タイトルiOS&Android化プロジェクト”として『キラ☆キラ』『DEARDROPS』『超電激ストライカー』をiOS&Android化するプロジェクトが始まっています。

竹内:現時点で支援総額は40%くらいでしょうか(取材は5月2日)。スマホ版は我々の資金で開発する道もあったのですが、今回はスマホにどれだけのお客様がいるのかを調査する意味でも行っています。クラウドファンディングは集金ツールと思われますが、使い方次第で色んな情報も引き出せる。この企画はマーケティングの意味合いもありますね。

―――確か御社の作品は以前、iOS等で販売されていた記憶があるのですが。震災のときにチャリティーが話題になっていましたよね?

竹内:そうですね。一度販売していたものをもう一度リリースして成立するのか、というのもチェックしたい点です。実はスマホ版を手掛けていた会社の営業が停止してしまったらしく、連絡がとれなくなってしまったんです。原作の権利は弊社なのですが、販売&サポートはその会社で、それでいてユーザーサポートへ定期的にメールが届く状況に困っていたんですね。こうなったら自分たちで制作した方が良いんじゃないかと思い、アプリ開発会社の方とも話がまとまり、プロジェクトが決定しました。

―――あと“最終プロジェクト”の発表もされました。

竹内:OVERDRIVEの活動としては次で終わっていいかなという気持ちでいます。この業界、定期的にメーカーが活動休止する話題はありますけど、我々としては元気なうちに、祭りのような感じで終わりたい。お客さんには最後の作品を購入してプレイしたもらったとき、「10年OVERDRIVEに付き合ってきたけど、無駄じゃなかったな」って思ってほしいんですよ。

―――最後まで楽しく終わりたいと。

竹内:とはいえ、これが凄く儲かったらもう一回やりますけどね(笑)。お客さんにもそう話をしていますし。余裕があるからこそ、記憶に残る作品を作れると思っています。ただ、制作すると発表しただけで、開発はこれから。内容はまだ何も決まっていないんですよ。販売形態についても未定です。18禁or一般もそうですし、8800円でパッケージ販売という形態も疑問に思っていますし。今はsteamでも新作をリリースしていますが、全く問題がない状況ですから。

―――どのような発表になるのか、楽しみにしています。

竹内:ある程度固まったら発表します。あと今回はクラウドファンディングを2回やる予定でいます。一回目は既存の素材も使って、もちろんストーリーやキャラクターは作りますけど、α版のような体験版を制作します。それを遊んで、続きをやりたいと思った人に支援してもらう。そして二回目は最終的な完成形が見えている状態でのクラウドファンディングですね。ある意味、先行予約みたいな形になります。

―――最初の方はアーリーアダプターが対象という感じでしょうか。

竹内:一回目の支援コースは、当然ですけどレアリティの高いものを用意します。美少女ゲームって同じものを何本も購入する習慣があったじゃないですか。あれが嫌いだなと思っていて。多くお金を払ってもらうなら、気持ちよく払える仕組みを用意した方がいいと思うんですよ。

―――発売日に向けて定期的に情報が更新され、クラウドファンディングによって二回盛り上がりがある流れでしょうか。

竹内:そうですね。ただ今回は発売日を明確には決めません。おおよその時期は言いますけど。活動内容と進捗状況を支援した方にちゃんと伝えていれば、お客さんは怒らないんです。

―――サイトには支援者のみ閲覧可能なページがありますね。

竹内:支援してくれた人のみですから、より詳しい情報が掲載できます。支援者にとってはその更新内容も楽しみになるし、また、なるように更新していく必要がある。ゲーム内容だけでなく、情報の発信やその進捗状況まで、色んなものを楽しみに変えて、気持ちよくお金を使ってもらえるようにとクラウドファンディングを続けていますよ。