3月に投票が締め切られた萌えゲーアワード2016のユーザー投票。その結果をもとに、GAME HEADLINEは業界座談会を開催した。今回掲載するのは、その後編となる。ランキングから見いだされた業界のテーマや課題、そして2017年の展望について、忌憚ない意見が飛び交ったこの座談会。それぞれの立ち位置から提案されたひとつひとつの意見について読者諸氏はどのように受け止めるのか。ぜひともご一読いただきたい。


 こだわりのある販促&製造が結果直結。同月競合人気作の存在も影響大

──ここまで萌えゲーアワード2016のユーザー投票ランキングをもとに昨年の美少女ゲーム業界を振り返ってきました。このランキングで、課題のようなものも見えてくるでしょうか?

流通B氏:上位作品はいろいろ仕掛けたから話題になって上位に入ったということなんでしょうけれど、やるメーカーは何も言わなくてもやるし、やらないメーカーは何を言ってもやらないんです。やはり作品の力が大きいというのはありと思いますから、例えば萌えゲーアワードの結果がこうだったから次はこうしようというのではないと思うんです。熱いユーザーさんが多いブランドは、ユーザーさんが独自で盛り上がってくれるというのもあるので。

製造E氏:製造側から見てみると、パッケージにこだわった作品が上位に来ているかも、というのはあります。『ワガママハイスペック』に『まいてつ』、『戦国†恋姫X ~乙女絢爛☆戦国絵巻~』あたりはパッケージにこだわりがありますよね。14位の『Re:LieF ~親愛なるあなたへ~』(RASK)などもそういう印象はありますし。

DL販売G氏:まあ、うちでもDL版特典なども付けていますけど、メーカーさん主導ですね。もともとDLでゲームを購入するのは特典やパッケージに重きを置かない人なわけですが、実際にプレイしてゲームが気に入ったときに「やっぱりグッズもほしい」と思う人っているんですよ。そういう人たちへのサービスといった感じで「タペストリー付きDL版」を出してみたんですが、そこまではやるような仕掛けではないと思います。やはりマテリアルに興味のある人はパッケージ版を買うのかな、と。ただ、ユーザーさんが美少女ゲームに使える額も制限されるわけですよね。そんな中で「今月一番ほしいゲームはパッケージで買って、二番手、三番手はちょっと安いDLで買おう」みたいな買い方をしている人が、割と多いんじゃないかなと思います。ですので、例えばその月の人気上位3作品が同時DL販売をした場合、DLで一番売れるのは二番人気の作品になると思うんです。

DL販売F氏:それは確かにありますよね。人気作品はファン心理として、やはり手元にモノを残したいという人が多い。それよりは二番人気や三番人気の作品のほうが動きは良いというのは、うちでも一緒ですから。

──そのほか、アワードランキングから何か読み取れることはありますか?

流通D氏:こうして見ると同じ月に人気作が出て競り合って両方上位というのが多いですよね。4月が『ワガママハイスペック』『戦国†恋姫X ~乙女絢爛☆戦国絵巻~』で、3月が『まいてつ』『あけいろ怪奇譚』、12月の『あきゆめくくる』(すみっこソフト)『シンソウノイズ ~受信探偵の事件簿~』(Azurite)とか。その一方で6月は14位の『オトメ*ドメイン』(ぱれっとクオリア)が月間1位で、11月の月間1位だった『枯れない世界と終わる花』(SWEET&TEA)は22位でしょ。やはり発売月は上手にばらしていきたいんですけど、「じゃあ、何月がいいんですか?」とメーカーさんに聞かれたときに嘘はつけないしねえ(笑)。それに人気作が発売される日には店舗に多くのお客様が来ますし、店舗の決算なども気になりますしね。もちろんメーカーさんの予算や政策スケジュールもあるから、そのあたりを考えると単純に「発売月を分散させる」と言えなくなっちゃうんですよ。

流通B氏:流通としての立場から改めてこのランキングを見ると、やはり販促などで仕掛けをやったメーカーの作品がきっちり上位に入ってきたなというのはあります。何度も言いますが、我々がアイデアを出しても、メーカーさんがやってくれなければ意味がないので。流通とメーカーが一緒に様々な仕掛けをやれた作品が上位に入ったという意味では、我々としても意味のあるランキングかなと思っています。

製造E氏:それにしても50位までを見ると、人気作が集中した月の強さがわかりますよね。4月は8位までが入っているんですから。これってメーカーさんが投票を盛り上げたりもしているんですか?

DL販売G氏:メーカーさんが投票を促しているところはありますよね。

流通C氏:それくらい熱いメーカーさんのほうがいいですよ。こういうランキングがあるんですから、前のめりになって「あの作品に負けたのか」って残念がってくれるメーカーさんだと、我々も「じゃあ次はもっといい作品を出して、告知も頑張りましょう」って言えますから。

流通B氏:毎月10位までは発表されるじゃないですか。じゃあ10位以内を狙おうとか、そういう盛り上がり方をするのはいいと思うんですよね。

流通C氏:熱心なメーカーというより、打つコマをたくさん持っていたメーカーですよね。最初に作品を公開した後も、このタイミングでイベントCGを追加で出して、PVはこの時期で、この段階で体験版を出す、というような。例えば『あけいろ怪奇譚』が4位というのは、作品の魅力はもちろんですが、メーカーさんが全国を回ったりニコ生を続けたりとか、地道に続けたことが結果につながったように思えます。

流通B氏:その一方で、ブランドの地力がそのまま表れて上位に入ったブランドもありますよね。この1本の販促ではなく、これまでの積み重ねでユーザーさんに安心感を持たれている作品。そういう作品は基本的に販売本数があるわけで、それは投票の母数になりますから。
 

 若いブランドの持つ勢いとベテランブランドの安定感が好結果に

──さて、萌えゲーアワードも実は2016年で11回目です。様々なゲームがランキングに上がってきましたが、業界全体をランキングから見て、何か思うところはありますか?

流通C氏:メーカーさんにはぜひストーリーをもってゲーム制作をしてほしいですね。「今年こういう作品を作ったから、来年はこういう作品。次はこんな作品」というような。やはりランキングを見ると、人気のシリーズ作品とか、同じ傾向の作品を作っているところは強いですからね。ブランドのゲーム作成にも物語を感じられるといいですね。

製造E氏:今年は新ブランを含めて若いブランドさんが多くランクインしているような印象もあるんですが、製造の立場からすると、若いブランドさんはパッケージなどのコンポーネントづくりにも熱意が高いかな、と思いました。ベテランのメーカーさんは実勢があるからこそ冒険しないというところも多いですから。ユーザーさんに伝わった熱量が投票に反映されたとすれば、そういう部分も見逃せないのかなと思います。

流通A氏:若い人たちは良くも悪くも勢いがありますよね。その勢いは大事だと思います。美少女ゲームも初期から作っている人たちは50代くらいになっていて、企画も一通り作ってきてしまっているし、実績がある分、安定しているんですよ。ただ、それが今のユーザーさんに響くかというと難しいところもあります。若い人たちが新しいブランドとして業界に入ってきて、こうしてユーザー評価をえるというのは、いいことだと思います。

DL販売E氏:HARUKAZEさんは2作品目ですけど、まだまだ勢いを感じますし、WhitePowderさん、りびどーそふとさんにも勢いを感じました。上位のまどそふとさんやLoseさんもそうですよね。

流通B氏:もちろんベテランのクリエイターや経験のある人たちが作ったゲームには、そういう人たちだからこその良さがあります。それはそれとして、若くて勢いのあるブランドさんが出てきてくれたことは、業界としてもいいことですよね。なので、ぜひ昨年デビューした若いブランドは、次の作品を作ってほしいです。どうしても燃え尽きてしまうというか、なかなか次が出てこない。まどそふとさんのように1本目から成功を収めた新ブランドというのは、次も早いんですけどね。
 

 いい作品作りと、新しくかつ積極的な展開がユーザー支持の高さに

──さて、そろそろお時間です。最後に2017年の美少女ゲーム業界についての展望をお願いします。

製造E氏:1月から3月までを見ても、厳しい1年になると思います。ただ、強いメーカーさんの盛り上がりは去年に負けないと思うので、そういう作品が発売される月は大きく盛り上がるように思います。

DL販売G氏:その意味では、やはり毎月売れる作品が1本あるといいですよね。そうすると毎月業界が盛り上がって見える。その継続性が結果的にユーザー数を増やすと思うんです。美少女ゲームファンの多くがすでにDL販売を利用する環境が整っていると思うので、パッケージと一緒に盛り上げていきたいですね。

流通A氏:去年よりは上向きになると思います。ただ変化はほしいですよね。どうしても閉塞感はあるので、あがいていくようなことをしなくてはならない。これはメーカーだけでなく、流通も、販売店さんも一緒で、そういう意識の中でメーカーと一緒に盛り上げていければ、いい方向に変わっていくと思います。その盛り上がりをリアルで見せていきたいですね。

流通C氏:お客さんはメーカーさんについているんですよね。我々は流通なので商品を店舗に卸していくのが一番の仕事なのですが、お客さんとメーカーさんの関係性に寄り添っていけるかどうかが勝負になるように思います。その上で、いかにユーザーさんを飽きさせないようにできるか。それができているところが結果を出して言っていると思いますので、今年もやっていきたいですね。

流通B氏:お客さんがメーカーについているのは、まさにその通りなんですが、やはりパッケージを売る立場として、店舗さんに頑張ってほしい。店頭配布会なども、いろんなお店でやりたいんです。でもできないと言われる。もっと一緒に盛り上げていきたいですね。

流通D氏:去年からLoseさんのグッズ販売などが好評で、店舗にお客さんが来てくれています。こういう仕掛けはもっとやっていきたいし、できればその興味をもっとゲームソフトに向けていきたいと思っています。なかなか難しいところはあるんですが、いろんなところに提案していきたいと思います。

DL販売F氏:これはDLもパッケージも一緒だと思うんですが、やはりいいコンテンツがあってこそだと思うんです。8800円出したらこんなに面白いものを遊べるんだよという状況になってほしいので、メーカーさんと協力して頑張っていきたいです。

──本日はお忙しいところ、ありがとうございました。
(2017年3月末に取材)