3月に投票が締め切られた「萌えゲーアワード2016」のユーザー投票。各賞の受賞タイトルはこの後の審査委員会で決定するが(最多投票から選ばれる「ユーザー支持賞」はすでに発表済み)、ユーザーの意見をダイレクトに反映したこの投票結果は、2016年の美少女ゲーム業界の動向を見極める一つの指針ともなる。今回の特集で流通や製造、ダウンロード販売各社からの参加をつのり、「萌えゲーアワード2016」のユーザー投票結果をもとに、2016年の市場を振り返る座談会を開催した。


 販売数減少という中で、流通販売が何をできるか考えた1年

──本日は、萌えゲーアワード2016のユーザー投票ランキング(別ウインドウで開く)をもとに、2016年の美少女ゲーム業界を振り返っていただきたいと思います。まずは大きく昨年の美少女ゲーム業界を、どのようにとらえられていますか?

流通A氏:数字の話をしてしまうと、やはり悪かったですね。2016年度という話をすると、2月などはかなり厳しい状況で、これが続いたら今年度も厳しいぞって感じで。ソフ倫さんのシール発行枚数も下がっている中で、流通会社として何ができるか。短期的視点と中長期的視点から、メーカーさんのゲーム制作のバックアップをしていかないと今後も先細りしていくしかない、という危機感を改めたというのが個人的な印象ですね。

流通C氏:弊社としても厳しい1年でしたけど、美少女ゲームの売り方が変わってきたかなと思いました。ユーザー投票2位の『まいてつ』(Lose)は、ゲーム本体だけでなくプロジェクト全体を告知する方向で、より広いユーザーさんの目につくようにしていましたよね。そういうメーカーが盛り上がりを作る一方で、全体としては前年、前々年のレベルに達していないわけです。販売店さんを見ても予約数以上は取ってくれませんし、売り切ってもリピートの発注がない。そうなると我々としても、在庫を持ちたくても持てないという流れになってしまっています。

製造E氏:製造側から見ても、数字は減っています。プレス数は前年比80%や60%なんてこともありますし、紙資材などは余ってしまったりしています。一方で人気ゲームのグッズは好調なので、会社としての美少女ゲーム関連の仕事という意味では、グッズ製造の割合が増加している状況ですね。

DL販売F氏:アワードランキング上位作品の取り扱い等もあり、上半期は好調でした。その一方で夏と冬に行っているセールの売り上げが今一つ伸びなかった印象です。月別に見ても前年比で下回っている時期もありましたし、パッケージの新作ソフトが減っていると、当然DL販売の品揃えにも影響はでてきますよね。それでもDLは過去作品の販売がありますが、それも飽和してひと段落したかな、という印象でした。

DL販売G氏:そうですね。売上自体はDLサイトとして順調に伸びてはいるんですが、伸び率は落ち着いたかな、と。これまでは過去作品と新作の両輪で進めてきたんですが、ある程度過去作品については出し尽くしたところがありまして、新作ソフトに頼る比率が大きくなった。そこが伸び悩みの原因のひとつでもあるのかなとは思います。それと、このランキングを見る限り凌辱系で評価の高い作品が少ないんですよね。幸い弊社は3年位前から凌辱系中心から萌え・純愛系中心に切り替えているんですけど、これまで「DLでは固い」と言われていた黒パッケージ系の売り上げが伸び悩んでいるのかなあとは思います。
 

 上半期に人気作集中した2016年の美少女ゲームマーケット

──そんな中でランキング上位にはユーザー評価が高い作品が並んでいるわけですが、このあたりから何か読み取れることはありますか?

製造E氏:傾向を見ると、ここ数年春先に人気作が固まる傾向があるのかなあ。期末というのもあるんでしょうけど、このあたりはどうなんでしょう?

流通B氏:流通から見れば、下半期にも人気作品を増やしてほしいというのが本音ですよね(笑)。実際にメーカーさんとは「発売日をずらせないか」という話はしているんですけど、「開発期間的に無理」と言われてしまいます。大体1年前後で1本作るペースですよね。結局、緩やかにずらしていくしかないと思っています。

流通D氏:年に複数本出すメーカーさんだと、毎年スケジュールが決まっちゃっているのでしょうがないんですよね。ただ2017年を見ると5月も本数があるので、少しずつズレてはいるのかなと思っています。

DL販売G氏:DLの場合は何月だから売れるということはないので、そこはあまり気にしません。むしろパッケージユーザーの評価ですね。これが高ければ売れますし、逆に低ければパッケージの本数が多くてもDLは売れないイメージ。もちろんできれば同時発売が一番動くのですが、そのあたりを踏まえてメーカーさんがどう判断されるかなので(笑)。

──その意味では萌えゲーアワードは発売翌月から投票開始ということで、ある種作品評価が反映されるランキングでもあります。

DL販売G氏:弊社のDL取り扱い作品の売り上げ上位を見ても、『戦国†恋姫X ~乙女絢爛☆戦国絵巻~』(BaseSon、ユーザー投票3位)や『あけいろ怪奇譚』(シルキーズプラスWASABI、同4位)、『千恋*万花』(ゆずソフト、同6位)あたりが上位ですよ。熱量の高いコアなファンの多いタイトルが上位に来るという意味では、萌えゲーアワードとDLの売り上げは近いと思います。

DL販売F氏:うちも共感できるところは大きいですよ。4月から夏にかけて取り扱い作品が多かったんですが、販売が好調だったアワード上位のタイトルを切欠に、他の作品を見たユーザーさんも多かったと思いますし、目につく作品がある分、他の販売フロアからのユーザー流入などもありました。今後はそういう道筋をどう作っていけるかだと考えています。
流通C氏:ランキング上位を見ると、やはりショップが在庫を持っていたというのもあると思います。その一方で、似た傾向の作品が上位に並んでいるというのもありますね。例えばシステム系のゲームは上位に入ってきていませんもんね。

流通A氏:ユーザーの熱が高い作品という意味では、上位作品は店頭イベントを仕掛けたりSNSを積極的に使ったりしていたなあって印象があります。ユーザーを巻き込んでの販促展開をうまくやっていたことでユーザーの熱も高まり、アワードの投票で競り合っていると「もっと投票して上位にしよう!」みたいな気持ちが盛り上がったのかなあという感じですね。

流通B氏:「推しているタイトルを勝たせたい」みたいな気持ちが煽られたというのはあるのかもしれませんね(笑)。

製造E氏:あとはやはり話題性ですよね。『ワガママハイスペック』はアニメ化で話題になったし、『まいてつ』は常に何かを仕掛けている印象でした。その意味ではユーザー心理を表したランキングですよね。
 

 ユーザーを巻き込んでの販促が重要も、作品傾向では市場動向との乖離も

──ユーザーを巻き込んでの販促が効果的であるということを、流通からメーカーに提案したりはされているんですか?

流通B氏:むしろメーカー主導かな。やるところはやるというか。
流通D氏:提案してもやらないところはやりませんからね。実際ランキング上位にそういう仕掛けを全然やらずに、ソフトの力だけで勝負しているところもあります。ただ、全体を見るとやっていかなければダメな時期であるのは明らかですよね。

流通C氏:実際に2~3人で作っているメーカーさんもあるので、そういうところに色々やろうと言っても物理的に無理な場合はありますからね。

流通B氏:あと、ランキングを見て黒パッケージが少ないというのは事実なんですけど、これは売り上げとはあまり関係ないと思います。人気投票のような場所で積極的に推していくような作品ではないですよね。むしろ自分の中で満足できればいいというユーザーが多いんじゃないでしょうか。

流通A氏:それと3D作品も入っていないですよね。イリュージョンさんなんかは売り上げを考えれば入っていてもいいはずですけど、入ってこない。ユーザーの熱量の方向性が、こういうランキングとは合わないんでしょうね。

流通C氏:黒系で一番上位はBISHOPさんの『放課後3 ~狙われた純潔~』ですが、売り上げを考えれば27位ということはないですよね。そのあたりをちゃんと見ていかなきゃダメだと思います。例えばもっと上位に入っているメーカーでも、別ブランドで黒パッケージ作品を出しているところがあるんです。そこは確かにユーザー間で話題になるのは萌えゲーアワード上位作品ですが、売り上げを支えているのは黒パッケージ作品ですから。

DL販売G氏:単純にアワードに投票する人と相性が良くないだけでしょうからね。黒パッケージのユーザーは年齢層も高いでしょうし、SNSなどで自分の思いを発信するのに積極的じゃない人も多い。萌え系の若いユーザーさんは、ある意味なんでもかんでもSNSで発信する人が多いじゃないですか(笑)。そういうユーザーが熱量を持った作品、ネット上でわいわい盛り上がりやすい作品、さらに言えばネット販促に力を入れた作品というのがランキング上位に入ってくるんだと思います。

DL販売F氏:そうやって考えると、ネット販促は勿論ですが、秋葉原の町での告知力というのも関係ありそうですね。面白そうなタイトルをユーザーが目にするという点でも、店頭の大型看板で告知をしている作品が上位に来ている印象もあります。

──そのほかの傾向として、いわゆる低価格作品、ミドルプライス作品が人気になってきている傾向もあるのではないでしょうか?

流通C氏:低価格作品は、内容が伝わりやすいゲームが上位に来ている印象はあります。低価格で気になるのは37位の『彼女を寝取ったヤリチン男を雌堕ちさせるまで』(メス男子)かなあ(笑)。こういうのが入ってくるのか?と思いましたけど。

製造E氏:これは男性向けとしてランキングに入ってきたんでしょうか?(笑)

──判断の難しいところです(笑)。ちなみに女性向け作品ですと、『Room No.9』(parade)が55位に入っています。


後編は来週の19日(水)に更新します。