PCゲーム業界紙「PCPRESS」では毎年、年末に業界関係者にお話を伺い、その一年を振り返る特集を掲載してきた。「GameHeadline」では、同様に一年を振り返りつつも、新しい年の展望や、目指すべき方向性についてまとめていく。今回はその後編だ。前編はこちら


 業界初の試みとなった『まいてつ』の売り方 既存の販売方法を見改める機会に

昨年、業界的に大きなトピックとなったのが『まいてつ』。多くの店舗から「今年印象に残るタイトル」として挙げられていたのだが、その理由は「特典のみを購入できる」仕組みが導入されたこと。ユーザーはソフトのみ、予約特典のみ、そして予約特典+ソフトとそれぞれ購入する方法が選べるようになっていた。
「ソフ倫さんでも話題になっていたと聞いています。メーカーの方も、こういう方法もあるのかと感じられたそうです。店舗は予約が特典頼りになりすぎて不安を感じることもあるとお聞きします。今回の展開は、店舗はソフトだけでなく関連グッズも販売できる。マーケットのニーズが存在することを気づかせる、いい機会になったのかなという気もしていますね」(藤原氏)

ただ藤原氏、そして若月氏も「どのメーカーでもやれる方法ではない」と口を揃える。株式会社ネクストン代表取締役でもある鈴木氏も同意見だ。
「全てのメーカーがやれる方法ではありませんが、こういうやり方もあるなとは思いました。実は我々も同じことをやってみたんです。Loseさんは予約や特典の状況を見て熟慮して実行された。だったら自分たちも試してみようと。明確な判断はつかなかったのですが、社内的には特定タイトルであれば続ける可能性もあるよね、という雰囲気にはなりましたね」

複数店舗で同じ商品を購入し、特典のみを手に入れソフトは中古に売る。コアユーザーにはお馴染みの光景だが、業界内で問題とする声の絶たない動きでもある。BugBugの大澤氏も語っている通り、今のユーザーが自由に使えるお金は、昔のように多くはない。「複数買いの割合は減っている」という声は数年前から増えてきているだけに、記憶にとどめておくべきトピックと言えよう。
 

 2017年に期待する売り方・販売方法 積極的なメーカーによる新規層獲得も注目

それでは2017年はどのような業界になるのか、または目指すべきか。鈴木氏は「開発の考え方」を改める必要性を説く。
「これから自分たちが作るものは著作物として、ユーザーの頭に残るものを作らないとダメでしょう。そのためには毎年違うものを、クリエイターの好奇心の赴くまま制作していては難しいと思います。メーカーにとっては年一本のタイトルでも、ユーザーにとっては毎月多数発売されるゲームの一本でしかない訳です。その中で印象に残るものを作るにはどうすればいいのか。続編を望む保守的なユーザーが多いマーケットで、クリエイターもよりビジネスライクに考えていく必要があると思いますね」

若月氏は意欲的なメーカーの活躍に期待を寄せる。
「まずは発売延期をしないこと、これは長年の課題ですね。その上で認知されやすい商品をつくる。アグレッシブなメーカーさんが増えて、新しいお客さんを掘り起こしてほしい。弊社もそんな作品を広められるよう、積極的に活動したいと思っていますし。あと奇をてらった活動も良いのですが、まずは基本の販促展開を抑えた上で行ってほしいですね」

また、数字的には2016年の状況を踏まえ、ラインナップの豊富な状況を期待する。
「昨年の状況を見ていると、今は有力作一本でその月の市場をけん引する、というよりも、目立つ作品はなくてもタイトル数が多い方が良い印象があります。一本ごとは少なくても、色んなユーザーが店に来て、色んなゲームを購入する方が活気あるように感じられます」

藤原氏は昨年12月の好調な状況、その流れを引き継いでの動きを期待する。
「12月の数字は良かったんですよ、予算ベースで言えば120%くらい。久しぶりに商売ができた月だったなと思います。やはり年末は商品が動く時期で流通も店舗も景気の良さを感じました。2017年はこういう月が少しでも増えるといいなと思っています」

そして大澤氏は昨年話題となった新メディア・VRの展開に注目している。
「昨年のアダルトVRのイベントも取材しましたけど、勢いを感じました。久しぶりに自作マシンのショップに行きましたよ。Windows初期に、あの美少女ゲームが遊びたいからとパソコンを新調した頃を思い出しましたね。今は3Dゲームを制作するメーカーが少なくなってしまってもったいないなと思うのですが、KISSさんやイリュージョンさんのゲームに反応しているユーザーを見ると、美少女ゲームユーザー以外からも注目されていて、新規層獲得の期待もあるなと感じています」
 

 2017年も春先に揃う有力タイトル 今の市場に適した販売方法を狙う

最後に今年の展望を伺った。
「毎年好調な4月のタイトルを中心に、まずは注目が集まっていますね。読者の声で目立つのはminori、クロシェット、sprite、ぱれっと、hibiki worksといった辺りでしょうか」(大澤氏)
「3~5月と、春は特に良いタイトルが揃っている。先ほどお話しました通り年末が好調で2016年を上手く締めくくれました。その勢いを継続できるよう、春先からのラインナップに期待しております」(藤原氏)

『9-nine-ここのつここのかここのいろ』(ぱれっと)、『蒼の彼方のフォーリズム EXTRA1』(sprite)、『グリザイア ファントムトリガー』(フロントウイング)といった実績十分のブランドが揃う4月を軸に、3月は『はるるみなもに!』(クロシェット)、『トリノライン』(minori)、5月も『天結いキャッスルマイスター』(エウシュリー)、『月に寄りそう乙女の作法2.1 E×S×PAR!!』(Navel)と有力タイトルが毎月リリースされる。春先に盛り上がりがくる美少女ゲーム市場が続いているが、今年も同様の傾向となりそうだ。

また昨年から普及し始めた、パッケージにダウンロードコードを入れる展開は、今後も増えていくだろう。
「2017年はパッケージ販売を軸に、ネット認証の普及も進んで、ダウンロード販売と合わせた、新しい売り方を提案していく年になると思います。従来のお客様から多様なお客様に対応していくよう、弊社も仮説を立てながら、挑戦していく年にしたいですね」(若月氏)

上半期は充実したタイトルが並び、新しい売り方も増えていくだろうが、根本の問題として美少女ゲームのメインユーザーとなる若者の人口増加が見込めない以上、大きく好転することは考えにくい。ただ、鈴木氏は「厳しい市場も捉え方次第」と語る。
「昔の景気が良かった時代を想定するのは、やはり厳しいですよ。しかし今の市場状況・推移を分析し、自分たちの作っているタイトルの内容を見て「売上はこれくらいだろう」と数字を予測してしく。弊社は低価格から大作まで色んな商品をリリースしましたが、その予測は外れなかった。そういう意味では、まだまだ経営していけますね」

今回の特集で紹介してきたタイトル数減少やミドルプライスの増加、また若いメーカーの活躍は、「過去の実績ではなく、今の市場に適した活動が目立つ」からではないか。弊紙もタブロイド版に加えwebの展開も広げており、変革を続けることの重要性を感じながら、今年の美少女ゲーム市場を分析していきたい。