今秋~冬にかけて目立ち始めた美少女ゲームの無料展開。ダウンロード・android等を使い、新たに始まった美少女ゲームの展開を進めるメーカーにお話を伺っていく。前回のサーカス、Campusに続いて、今回は暁WORKS・あっぷりけ、SkyFish pocoにお話を伺った。


 無料一般向けAVG配信後、18禁向けパッケージ版を【あっぷりけ、暁WORKS】

全年齢向け無料AVGをandroid、iOS、Windowsで配信。1月に18禁要素を追加したパッケージ版を発売する『月影のシミュラクル』

(株)ハイレベル傘下のブランド、あっぷりけと暁WORKSが一般向け無料AVGを発表したのは9月中旬。10月1日から『月影のシミュラクル』『緋のない所に烟は立たない』がandroid、iOS、Windowsダウンロードで配信された。特集の冒頭でも述べている通り、何年も前から「最初に無料で公開して……という形」を模索していたハイレベル代表の司城氏。来年1月に発売される18禁のパッケージ版の展開は、ユーザーの反応を見て決定したと語る。

「最初から、無料版を公開した後に何かしら有料で提供することは決めていて、その内容はお客様の反応やダウンロード数によって何パターンか用意していました。ロープライスやフルプライスのパターンもありましたね。今回はミドルプライスで18禁要素を追加したものを1月に販売しますが、一つ意識したのは早めにリリースすることです。今回の作品は“ライトビジュアルノベル”と称している通り、ライトノベルを意識した内容・ボリュームなのですが、あの市場はだいたい4~5か月で次が販売されるんですね。ありがたいことに評価もいただいており、ユーザーの熱が冷めない間隔で出すのも大切だろうと10月1日公開から約四か月、1月末に発売することを決定しました」

司城氏は「中身がわかっているからこそ買いやすいのでは」と今回の内容について語る。
「自分も雑誌を毎週読みながら、気に入った作品の単行本が出たらそちらも購入する。こういうことが美少女ゲームでもできないかなと。美少女ゲームの強みってやっぱりエロだと思うんですね。キャラクターを好きになったら、そのエロいシーンも見たくなる。一般向けライトノベルは性表現に限界はありますが、我々の業界は可能な訳です。また、若いユーザーが入ってくる道にもなると思うんですね。AVGというジャンルがなくなるんじゃないか、という危惧もあって、スマホを通してAVGの楽しみを知ってもらいたいです」

また司城氏はゲームボリュームについても疑問を投げかける。
「以前はプレイ時間40時間とか目指す時期がありましたけど、昔以上に“積まれている”気がして。ゆっくりと起承転結を描いたら、最後までプレイしてもらえないと感じています。体験版も同様で、序盤だけを見せてもユーザーが納得して購入にできるのか。今回の展開はある意味、体験版と似ているのですが、最後まで物語が完結しているので、物語・キャラクターを気に入ってもらえれば安心して購入できると考えています」

最後に今後の予定について伺った。
「ライトビジュアルノベルの展開は今後も続けたいと考えています。コンシューマ市場がすでに変化しているように、美少女ゲームも売り方は変わっていくと思うんですね。個人的にスマホでゲームを作ろうとはあまり考えないのですが、今はみんなが持っているものですから、ここを無視しての展開はありえないと思います」 

 全年齢向け無料AVGを配信、後日談を描いた18禁版をリリース【SkyFish poco】

8月、11月、12月と全年齢向け無料AVG『星空TeaParty』を配信。後日談を描いた18禁版『星空TeaParty えくすとら』を発売する

8月、11月、12月と全年齢向け無料AVG『星空TeaParty』の第一話~三話を展開。12月22日(取材後に3月24日に延期が発表された)に後日談を描いた18禁版の『星空TeaParty えくすとら ~「恋愛(アイ)」はじまりました!~』をパッケージ&ダウンロード販売するSkyFish poco。同ブランド代表の大須賀氏も前述の司城氏同様、体験版の存在や、現在のAVG市場の問題を指摘する。

「今、体験版はお客さんの導入口になっていない。しかもコンシューマでもAVGがなくなった。ソーシャルゲームもAVGには向いていません。こういう状況でAVGを遊んでもらう、知ってもらうにはどうすればいいのか。販売方法を映像作品に例えるとパッケージは映画館で見る映画、ソーシャルはケーブルテレビだと思っています。ここに必要なのは地上波テレビ。視聴者がお金を払わない、つまり無料ゲームですね」

『星空TeaParty』はSkyFishおよびダウンロードサイトから入手できるものと、DMMから入手できるボイス付の二種類が存在する。
「弊社サイトからのはローカルFMでしょうか(笑)。DMMからのはDMM GAME PLAYERが必要でCMも入るのですが音声がついている。このCMは地上波テレビのCMと似た役割ですね」

「色々な形での配信を考えていきたい」と語る大須賀氏。さらに無料ゲームの展開についても明確に「続けていく」と語る。
「全年齢向けは絶対に必要です。また展開方法も純粋に無料版のみの場合や、18禁展開しないものがあってもいい。今回は初めてということで、ユーザーさんもいきなりついてくることは難しいでしょうから18禁版も用意しましたけど」

反響については予想以上のようだ。
「弊社的にはサイバーテロでもあったのかと思うくらいのダウンロード数です。この1/10でも売れたら大成功ですが、そんな注文数は見ていないですね(苦笑)。ただ、ユーザーが直接メーカーに意見を伝えなくなった今、普通の体験版よりはるかに大きな反響が見えたなという手ごたえがあります」

一方で今回の展開については、ブランド10周年等の時期的な問題もあり、もう少し時間がほしかったとも語る。
「自分としてはプロジェクトの結果を最低でも半年の期間で見たいんですよ。ゲームが完結してから半年、今回は無料版の完結とパッケージの発売が同時になっていますが、例えば来年6月までユーザーの動向を見てからパッケージ展開の内容を決める。変な話、パッケージを出すときに全年齢版か18禁版かを悩むことがあってもいいとすら考えています」

 変化したユーザーに対し「美少女ゲーム」をどう組み込むのか

取材を通して改めて感じるのは各メーカーの「危機感」の強さ。

パソコン市場の縮小に加え、ドライブがついていないパソコンがメインになったことで、ダウンロードコードを入れる展開は今年から本格化してきたが、今回紹介した4メーカーはさらに一歩踏み込んだ展開を見せている。

ユーザーの時間が細切れになり各メディアとの奪い合いが激化、スマートフォンを持っていることが当たり前になり、AVGを遊ぶことそのものがマイナーになっている。その環境に対して「美少女ゲーム」をどう組み込んでいくのか。

ソーシャルゲームでの展開も一筋縄ではいかなくなった現状において、これら無料ゲーム+αの展開がどうなるのか、業界にとっても注目だろう。