美少女ゲームの無料+一部課金スタイルは、DMM・にじよめといったプラットフォームを中心に定着した感がある。しかし今年に入って、この形とは異なる、新たな形の美少女ゲームを展開するメーカーが増えてきた。ダウンロード・android等を使い、新たに始まった美少女ゲームの展開を進めるメーカーにお話を伺っていく。


 ダウンロードやスマートフォンでの新展開

8月末に全年齢向けAVG『星空TeaParty』の第一話を無料配信、第二話・第三話を11月・12月と連続配信し、12月22日(取材後、3月24日への延期が発表された)に18禁版の『星空TeaParty えくすとら ~「恋愛(アイ)」はじまりました!~』をパッケージ&ダウンロード販売するSkyFish poco。

10月に発売した『Deep Love Diary -恋人日記-』はWindowsとAndroidの両OSに対応、11月末にダウンロード版を全年齢本編無料版とX-RATED版の2バージョンで展開。以後リリースする作品でも同様の展開を進めていくCampus。

10月に無料の全年齢向けAVG『月影のシミュラクル』(あっぷりけ)、『緋のない所に烟は立たない』(暁WORKS)をiPhone、android、ダウンロードで展開。1月に18禁要素を追加したパッケージ版を発売する(株)ハイレベル。

そして上記3メーカーとは形式が異なるが、9月発売の『D.C.Ⅲ With You』ではデータ版がダウンロード可能なコードをパッケージ版に同梱、4月発売の『D.S. -Dal Segno-』および次回作でも、パッケージ版購入者はandroid版も無料で追加ダウンロードできる仕組みを組み込んできたサーカス。

今秋、無料版やスマートフォンを組み込んでの展開を進めるメーカーが目立ち始めている。そしてその理由は、微妙な違いはもちろんあるが、取材を行ったメーカーすべてで共通していた。それは「市場規模が縮小している美少女ゲームへの危機感」であり、思いついた時期も「何年も前から考えてきた」と口を揃える。

「かなり前から今回の仕組みは考えていました。本当は市場に余裕のある頃にやりたかったのですが、もう今やらないといけない、という時期になってしまいましたね」(SkyFish代表・大須賀氏)

「動き出すのに時間はかかりましたが何年も前から、最初に無料で公開して……という形は頭の中にありました」(ハイレベル・司城氏)

「この業界がという以前に、パソコン市場が減少している。このままでは良くない、というのは業界の方、みんなが考えていたと思いますよ」(Campus・服部氏)

「エンタテイメント業界はお客さんのリソース、お金だけでなく時間の奪い合いです。自分自身もスマホの方が触っている時間が長いことを思うと、こっちを意識するのは当然だろうと考えたんです」(サーカス広報・Yuichi氏)

 

 パッケージ版購入者はandroidでもプレイ可能【サーカス】

自社でサーバを持ち、ユーザーもID登録に慣れていることでスムーズに展開することができたandroid版の『D.S. -Dal Segno-』

サーカスが『D.S. -Dal Segno-』でandroid版を制作したのは、システムの刷新がきっかけだった。

「数年前、OSの世代交代が進んだこともあり、AVGのシステムを一から作り直すことになりました。そこで何か新しいサービスをと考えたのですが、当時からお客さんがIDを登録していて、例えば製品ごとに用意しているCLコード(ソフト起動時に使用)を入れておけば、紛失したときにもすぐに呼び出せる仕組みがあったんですね。まず、その場所にセーブデータを登録できないかと考えました。他社で行われていたandroidとパソコンでセーブデータを共有できるのは面白いと思っていたんです。イチから始めるのは大変ですが、弊社にはサーバがあり、プログラマがいて、ユーザーデータが登録されている。制作可能だろうと社内で話を進めていったんです」

ユーザーがIDという形でデータ登録されることに慣れているのも、導入がスムーズに進んだ要因だろう。
「そこからさらに一歩進めて、パッケージ版を購入したユーザーはandroid版を無料でダウンロードできるようにしました。弊社サーバからのダウンロードですので、ゲーム内容は18禁要素も含め、パッケージ版と同じです。正直、電車内で遊ぶとはあまり考えていません。ただ、テレビを見ながらのように、パソコンの前で構えてやる必要なく、気軽に遊べるのは便利だと思うんですよね」

ユーザーの使用状況は「予想以上」とのこと。

「android版はニコ生で発表したんですけど反応も良くて、実際のダウンロード数も予想以上でした。ただ、セーブデータ共有はあまり使われていなくて、それぞれで楽しんでいるのかなと思います」

9月に発売された『D.C.Ⅲ With You』はandroid版ではなく、ダウンロードできるコードを同梱。これはゲーム内容を考慮しての構成となっている。

「『D.C.Ⅲ With You』は短めのシナリオが9本入っていて、1本ごとに気軽に遊べる。あと肌色も多めです(笑)。心が動いたときにぱっと楽しめるゲームなんですね。セーブデータの共有は長編に向いていると感じています。ダウンロードコードを入れたのは、やはり今販売されているパソコンにドライブがついていないのが増えている以上、必要な方法でしょう」

なお、先日発表された来年4月28日発売予定の『D.S.i.F. -Dal Segno- in Future』では、続編ということもあり『D.S. -Dal Segno-』同様にandroid版も用意されている。

 

 WindowsとAndroidの両OS展開、一般向けDL版は無料に【Campus】

Windowsのみに依存せず、Windows・Androidの両OSで展開。1月発売の『不運と幸運と恋占いのタロット』以前の作品も順次対応

Yuichi氏が語っていたドライブの問題は何年も語られてきた課題だが、light・Campus等のブランドを擁する(株)グリーンウッド代表取締役・服部氏は加えてOS、Windows市場の縮小を指摘する。

「パソコンそのものというより、Windows市場からのユーザー離れが加速している。これまではパソコン=Windowsという感覚でやってきましたが、すでにandroidがOSのパソコンも存在している。スマホのandroidやiPhoneも機能的にはパソコンと変わらない。この状況でOSをWindowsに依存することはやめよう、というのが今回の試みです」

10月発売の『Deep Love Diary -恋人日記-』をWindowsとAndroidの両OSで展開(androidは11月から)。来年1月発売の『不運と幸運と恋占いのタロット』も同様で、またこれまでCampusブランドでリリースしてきた作品も、順次、android版のリリースが予定されている。

「今の弊社の開発環境ではWindows版を制作すると、ある程度ですが自動的にandroid版もiOS版もできるようになっている。調整はもちろんありますけど、かなり演出にこだわったゲームつくりをしても対応できて、イチから作るよりは早いんですよ」

lightの作品は特にそうだが、ボリュームのある作品が多い。昨年、新たにCampusブランドを設立し、低価格のコンパクトなゲームをリリースし続けてきたのもandroid版の展開を視野に入れてのものだ。

「light作品のような1.5Mのシナリオをandroidで遊んでもらうのは難しい。Campusブランドでは500Kくらいで学園もので……という枠の中で制作するようにやってきました。あとandroidは容量が32Gとかなので、その中に入れてもらえるかどうか。DMMさんのシステムが優秀で、一度購入したユーザーはいつでもダウンロードしなおせる仕組みにできました」

ソフトを購入するとWindowsとAndroid、どちらでもプレイ可能。さらにダウンロード版は全年齢本編無料版とX-RATED版の2バージョンが制作された。

「最初は無料までは考えていなかったのですが、androidが基本無料の文化になっている以上、そちらに合わせる必要があること。あとユーザーがプレイできる環境を広げていきたいんですね。今はDMMさん、DLsiteさんのサイトですが、GooglePlay等にも置いてもらえるように交渉しているところです」

美少女ゲームの18禁版と全年齢版の差異は、コンシューマ移植版のような作り方が想像されるが、Campusではこだわりの強いスタッフが多く「全年齢になっても違和感のない作品を目指している」とのこと。また、起用されているシナリオ・原画は美少女ゲームの経験がない、新しいクリエイターばかり。新しい仕組みを作っていこうとの意図がそのスタッフ編成にも表れている。

【12月21更新の「後編」に続く】