2016年の上半期は、セールス数もさることながら、印象的な動き・展開を見せる作品が揃う時期となった。また、RPGやSLGなどのゲーム性のある作品を手掛けているメーカーが揃って発売された時期にもなっている。そこで今回の特集では、プレビュー版だった弊紙「0号」の「上半期レビュー」特集で、店舗から話題ののぼった作品をピックアップ。メーカーに取材を行い、それぞれの活動についてまとめていく。


 上半期、最も話題となった『まいてつ』

店舗に「上半期で印象に残ったタイトル」を伺った際、最も話題になったのが『まいてつ』(Lose)だ。充実した販促展開に、テーマにもなっている鉄道を使ったイベントも開催。ゲーム内容面も充実しており、発売後も伸びを見せ、上半期ではトップクラスのセールスを記録する。また、6月に開催された初ライブも話題となったが、やはり本作で行われた「特典のみを購入できる」展開はおそらく業界初であり、それを実現させたことと、大ヒットという結果を記録したことは強いインパクトを与えた。企画の経緯を同ブランド代表のtO氏は次のように語る。
「ユーザーさんの複数購入をなんとかしたい、という思いが以前からありまして。特典だけを別口で購入できる仕組みがあれば、お金を払いやすいんじゃないかと考えた訳です」
『まいてつ』ではソフトのみ、予約特典のみ、そして予約特典+ソフトとそれぞれ購入する方法が選べた。そして店舗ごとの特典も同様に購入方法が選べるようになっている。
「専売グッズみたいなものですよね。その店舗の特典が抱き枕カバーだったら、抱き枕カバーがその店の専売グッズになる。各店舗に説明するのはけっこう大変でしたけど、一部店舗以外はスムーズに話はまとまりましたよ」

この販売方法について「数が読みにくい」との声が店舗からあった。筆者自身もその方法を聞いたときは在庫リスクの問題を想定したのだが、tO氏はシンプルに考えている。
「店舗にとっては、グッズはグッズで利益が出ますから悪くないと思うんですよね。お店ごとに仕組みは異なるようですが予約特典が負担になっている、というお話も聞きます。この特典は余計に多くとる必要はないと言いますか、受注生産で良いと考えているんです。数が集まるようなら作ればいいし、なければ作らないだけ。最初にこちらで多めに用意しておいて、売れるかは不明なところもありましたけど、結果としてはリピートも続きました。予約特典グッズの絵は、予約時に一度使って終わりだったものを、今回は何度も使用することができたのも良かったと思います」

また本作は販売内容だけでなく、初期状態でエッチシーンが全て解放と、ゲーム内容でも珍しい仕組みになっている。
「エッチシーンが目的の人にとって購入してすぐに見られないのは不満だろうと思うんです。とはいえ物語の序盤にエッチシーンを組み込もうとすると、シナリオ制作の難易度が上がります。だったらエッチシーンを楽しみたい人と、物語を楽しみたい人、それぞれが満足できる仕様にと考えました。物語の途中でエッチシーンに到達したときも、エッチシーンに入るか、物語を進めるかを選べるようになっています」

アンケートでもそれぞれが独立した形式を好む層が多かったことが、このような仕組みにつながったのだが、先ほどの特典販売のお話でも感じた、物事をシンプルにとらえるtO氏の志向が感じられる。また、本作ではDVDソフトと同時に、商品がDLできるコードも封入。現在の美少女ゲーム市場でも課題となっている、ドライブのないパソコンが増えたことへの配慮であるが、1年以上前から検討を重ねていたようで、市場を見てうつ手の速さがあることも大ヒットの一因と言えよう。

 

 2作目で大きく躍進したHARUKAZE

上半期では先ほど紹介した『まいてつ』や『戦国†恋姫X ~乙女絢爛☆戦国絵巻~』(BaseSon)のセールスが目立ったのだが、「予想以上の動きを見せた」という点で多くの店舗から話題に上ったのが『ノラと皇女と野良猫ハート』。HARUKAZEブランドの2作目だが、デビュー作より数字を大きく伸ばし、また萌えゲーアワードの月間賞を受賞と、ゲーム内容でも高い評価を得ている。広報のなかがわ氏にブランドについてお話を伺った。

「同人ゲームを制作していたときにお話をいただき、『らぶおぶ恋愛皇帝 of LOVE!』をリリースしました。そのデビュー作では商業作品だからできること、ボリュームのある作品を制作できて、内容的にも販売本数的にも一定の手ごたえがあったんですね。発売した2013年5月は『グリザイアの楽園』(フロントウイング)、『レミニセンス』(てぃ~ぐる)、『D.C.Ⅲ R~ダ・カーポⅢ アール~ X-rated』(サーカス)等、大作が揃っていて、その中でいくつかのランキングを見ても10位以内に入ったので悪くなかったかなと。ただ、一度商業作品の開発を経験したことで、いくつか反省点も見えましたし、作品内容や表現の幅を広げる必要性も感じました。そこで時間をかけても良いものを作ろうと開発したのが『ノラと皇女と野良猫ハート』だったんです」

「時間をかけた」と語っている通り、デビュー作から2年半以上あいての2作目。だからこそ店舗側でも数字が読みにくく、予想外の結果にもつながっているのだが、その点はメーカー側も考慮していた。
「実績があれば間隔が空いても予約してもらえると思うのですが、まだ2作目ではそれも難しい。例え面白そうと思っても手が出ないだろう、取りこぼしはあるだろうと思っていましたね。ありがたいことに高評価もいただき、リピートも伸びまして、後から始まったダウンロードも含めるとセールス全体の4割くらいになっていますし、まだまだ伸びると思います」

リピートも順調だが、イニシャルの数字も決して低くはなく、そこには「時間をかけた」販促展開の影響も大きい。
「デビュー時期が近かったこともあり、まどそふとさんとは仲が良いんです。どちらも20代の若いスタッフが多いですし。販促展開ではご相談もさせていただき、コラボキャンペーンも行いました。まどそふとさんがすでに放送されましたが、TVアニメの展開も早めから動いていましたね」

来年に続編『ノラと皇女と野良猫ハート2(仮)』のリリースを先日発表。『ノラと皇女と野良猫ハート』のコンシューマ版、さらに海外展開も視野に入れている。
「来年、再来年になれば自社でやるメーカーも増えてくると思っています。先日の海外イベントでもチラシを配布しましたが、まだ全然伸びると感じましたし、伸びるジャンルであれば自ら活動して、ノウハウを重ねていきたいですね」