美少女ゲーム市場の問題の一つとして、長く語られてきたのが「不正DL」である。この対策として、いわゆるコピーガードなどの施策が行われてきた。しかし、ユーザーにとって負担を強いる結果になる要素も少なからずあったため、業界全体として効果的な対策ができてきたかというと、やや首をかしげざるを得ない点もある。その流れが2015年あたりから変わり始めてきているようだ。既存のDRM(デジタル著作権管理)開発の進化が、DMMやDLsite.comなどの積極的な取り組みとあいまって、メーカーやユーザーにとって使いやすいDRMという認識が強くなってきた。そのキーワードといえるのが「ユーザーサービス」。このキーワードを中心に、開発を進めている3社に取材を行った。


 ユーザーのスタイルに合わせたDRMサービスを

インターレックス株式会社は2002年からDRM開発を行ってきた。しかし積極的に導入するのは主にビジネスソフト。PCゲームは積極的ではなかったと、同社代表の佐藤健次氏は語る。
「PCゲームブランドとは、まずDRMの必要性から話していく必要がありました。その流れが変わったのは去年くらいから。われわれの意識の中で"DRMはユーザー管理ではなく、ユーザーサービスである"という意識が出てきたことも大きいと思います」

佐藤氏も「ユーザーサービスとしてのDRM」を強く意識している。そのきっかけの一つとなったのが、中古市場との付き合い方だ。佐藤氏はACCS(コンピュータソフトウェア著作権協会)の設立初期メンバーの一人。当時はACCSと中古市場は対立し、最高裁までデジタル品の中古で争ったという経緯もある。
「違法DLとは異なる意味で、中古市場とPCゲームメーカーはいい関係を築いてこなかった。中古ソフトが売れてもメーカーにはお金が入りませんから中古商品にもユーザーサポートなどは行ってこなかった。でも、ユーザーからすれば新品より安いとはいえ、なにがしかのお金を支払っているんです。そうなると「金払っているのに、なぜサポートしない?」という意識になります」(佐藤氏)

その結果、ユーザーはメーカーに不信感を抱き、美少女ゲーム離れにつながりかねない。そこで出てきたのがあかべぇそふとの試み。そこにはインターレックスのアクティベーションが大きく寄与している。
「弊社のアクティベーションを導入してもらい、パッケージに認証カードを同梱しました。そして中古店舗には、認証カードだけを別途卸すようにしたのです。こうすることでアクティベーションを導入しながら、中古店でも普通にゲームを販売できるようにした。さらにいくらかの現金がメーカー側にも回ってくる仕組みです」

プレイしたゲームを中古ショップに売る、中古ショップでゲームを買うというのが美少女ゲームを楽しむライフスタイルの一つとして確立している以上、分けて考えるわけにはいかないのではないか?と佐藤氏は考える。また、今日的な市場状況では、地方の中古ショップもユーザー層確保に重要な役割を果たしている。ならば、そこも含めて一つの市場となるような施策を行うべきだ。
「本来ならば流通がやらなければいけない仕事」と佐藤氏は前置きして、「新品を購入するユーザーを守るのはもちろんだが、中古ユーザーからもメーカーにお金が還流し、ユーザーへのサポートも可能な仕組みづくりが今後重要になってくる」とコメントする。アクティベーションであるからこその中古ユーザーへのサービスという新たな観点として、中古店舗への認証カード卸というのは注目に値する。

もう一つの施策としては、Loseとインターレックスで行ったパッケージへのDLカード封入だ。ディスクドライブを装備していないPCが普及し始め、従来のパッケージソフトの形態では購入できない層が増えてきている。しかしDL販売だけでは店舗がもたない。そこでアクティベーション認証を紐づけ、シリアルを印刷したカードを封入。パッケージ購入者もDLでのゲーム入手を可能とした。さらにLoseは一歩推し進め、認証カード登録者へのアペンド配信も実施している。
「インターレックスはゲーム制作も行ってきました。それだけにメーカー視点のDRM活用に対応できるし、店舗の重要性も理解している。また、15年以上DRM開発を行ってきた蓄積があるので、こうしたDLサービスにも対応できるんです」(佐藤氏)

やはりここでも、佐藤氏から出てくるのは「サービス」。DRMは管理ではなくサービスであることを実践で表している。
「インターレックスのDRMは「バディ」と名付けています。これはダイビング用語で命を預けあう相棒という意味。それくらいの信頼関係をメーカーさんと結びながら、今後もDRMを展開していきたい。例えば認証コードの発行もひとつ50円ですが、使わなかったコードを返却してもらえれば、その数に応じて返金するシステムもあります。使われないアクティベーションではお金は取れませんからね。そういったサービス性を高めていくことで、使いやすく、違法DLの抑止力になるようなDRMを目指していきます」

 将来への投資としてのDRM、販売店としてできること

DMMがDRMシステムを構築するきっかけとなったのは、とあるゲームのDL限定販売だったとDMM.comの稲垣寿紹氏は教えてくれた。
「シリーズ作品なのですが、たびたびの対策にもかかわらず、結局クラックされてしまい、既存のシステム(マスターに手を加えずにプロテクトをかける方式)での限界を感じたのと同時に、ただただ悔しくて、不正なユーザーが簡単に遊べてしまう状況をどうにかしたい、と考えたのが始まりでした」

こうしてDMMオリジナルのDRMシステムがスタートしたが、「正直、DMMにメリットはあまりない」と稲垣氏。
「よく言われるのは『パッケージユーザーの会員獲得』という話で、実際にパッケージ販売店舗様から、そこを敬遠するお話を聞くのも事実ですが、現在DMMには2,100万以上のアカウント登録があり「既存のパッケージユーザーでDMMに新規会員登録する」という人はごく少数しかいない。実際に、DMMのアカウントが必須、という仕組みでパッケージ販売したゲームタイトルでの新規会員登録はほぼゼロだった
「それよりも将来への投資、という意味が大きいです。今は美少女ゲームのDL販売も順調ではありますが、パッケージと同じようにいつか落ちていく時が来る可能性がある。それをどうにか食い止めるべく、販売店としてできることをやっておこうという気持ちです」
もちろん業界全体を見据えた部分もある。
「違法DLがなくならないのは一面の真実。しかしパッケージ販売を含む美少女ゲームの販売、全体で対策して抑止していく必要がある。それをメーカー単位で行うのが難しいのであれば、我々がDRMに取り組む意味はありますよね」

今後の課題となるのは「手軽さと堅牢性とのバランス」と稲垣氏。この二つは反比例するものだ。現状ではDMMのDRMは起動するたびにPCが通信する必要がある。

既存のDRMシステムでは初回起動時のみの通信を増やした理由を、以下のように語ってくれた。
「頻繁に通信すればするほど、堅牢性は上がります。極端なことを言えば常に通信させればいい。でも、『オフラインPCで遊べるゲーム』というのも、現在の美少女ゲームの魅力。その魅力を失うことなく、今以上の堅牢性を保つ為には、最小限の範囲で複数回通信させる必要がある、と考えたからです」

メーカーにもシステム用のプログラムを組み込んでもらう必要がある。これもきっかけとなったゲームの販売で、『メーカーが全く作業を行わなくてもプロテクトが可能な方式でのDRMは、根本的に容易にクラックされる仕組み』と痛感した経験の元、最小限の範囲でメーカーの作業が必要、と考えたからである。

更にその作業を簡単にする為、今後もDMMではシステムの改修を続けていくという。また、システム改修だけでなく、今回の仕組みを通じた、将来的なビジョンも語ってくれた。
「我々が、ゲームプレイをアカウントによって制御しようとしているのは、今回のプロジェクトが単にDRMの開発に留まらない『DMM GAME PLAYER』という新たなプラットフォームの構築プロジェクトだからです。詳細は言えませんが、簡単に言えば、「R18のあるSTEAM」です。今後の様々な新規施策に繋げていく為には複数サービスをまたぐ、一貫したユーザー情報、つまりアカウントとユーザーのゲームプレイの紐付けが必須となるからです。いずれにしてもメーカーさんとの協調が絶対。だから、不満や改善要望があれば、遠慮なく、どんどん言って頂いて構わない。とにかく美少女ゲームをユーザーにより楽しく遊んで頂く為のサービスや施策をメーカーさんと二人三脚で創っていきたいですね」