近年目立ち始めた美少女ゲームの海外展開。事業を進めているメーカー・関係者にお話を聞いて特集にまとめた。後編では翻訳の品質やサポートの重要性、また18禁ゲームを広く販売するための課題について紹介していく(前編はこちら)。


 鍵となる翻訳の品質、海外に翻訳チームも

海外展開する上で最も大事になってくるのが翻訳のクオリティだ。単純に日本語→英語に翻訳しただけではダメで、微妙な言い回しや"オタク的"言語のニュアンスを的確に変換する能力が求められる。それはつまり英語・日本語ともに深く理解し、オタク的センスも持ち合わせなければいけない。

最初に活動を始めたMangaGamerは、人材を集める過程を「鳥取砂丘に投げた5円玉を探すよう」(竹内氏)と振り返る。現在は帰国子女で英語もネイティブ、かつオタクな堀田氏が加わり、20人ほどが翻訳スタッフに。フロントウイングやSekaiProjectは社内スタッフもいるが、取材したメーカーは外注が翻訳の中心を担っている場合が多い。
「海外に翻訳のチームがあって、そこと連絡をとりながら進めます。弊社の『ルートダブル』の場合だと単純に翻訳するだけだと3~4ヶ月。そこから品質チェックやテキストの統一・編集をフーバーがやっていますけど、かなり大変ですよ」(細田氏)

ジョン・フーバー氏は海外で違法に翻訳されていた作品の質が低いことをなんとか変えたいと思ったことがこの仕事を始まるきっかけ。取材でもお話を伺ったが、オタクならではの知識と情熱が仕事に繋がっていると感じられた。
 また、木村氏のお話を聞いたときは、翻訳者という仕事だけには留まらない仕事との印象も受けた。
「向こうの言葉でちゃんと表現するには、ただ翻訳するだけではダメで、クリエイターというか作家として能力が求められるんです。そして作家であれば、作家ごとに個性が出てくるのは当然で、複数ライターで翻訳を進めていく場合は、中心でディレクションし、文体を整えていくスキルが求められる。このクラスの人材はまだまだ少ないですね」

ちなみに実際に翻訳作業をしているフーバー氏、堀田氏の両名に苦労する点を伺ったところ"テキストボリューム"は共通の悩ましい要素。加えてフーバー氏が現在進めているタイトルは「複雑な物語で苦労している」とのことだ。また堀田氏によると「ある黒系の作品は描写が厳しくて翻訳者が参ってしまった」ことがあり、尖った作風は別の意味で難しさが出てくるのかもしれない。

 "濃い" 意見に対応するサポートの重要性

また山川氏は翻訳も大事だが、それ以上にサポートの重要性を語る。
「海外のユーザーはガンガン意見をぶつけてくるんですよ。内容も細かなゲーム内容から違法データ前提のものまであって。これらに対応するのは大変なんですけど、ユーザーサポートの体制が整っていないと、どこかで"炎上"する。それも日本より酷いことになると思います。海外事業を続けていくうえでは、翻訳以上に配慮する必要性も感じますね」

海外のイベントではステージ発表を行った後に質疑応答を行うのが定番で「ユーザーがずらっと並んで」(木村氏)、それも「凄く"濃い"ですよ、日本人よりも詳しい」(馬場氏)人たちが質問をしてくる。イベントに参加できるだけのユーザー、という側面もあるだろうが"声の大きいユーザー"の存在感は日本以上のものがある模様。また、木村氏はユーザー気質については思うところがあるようだ。

「社内でも話すことがあるのですが、彼らの行動をみていると20年くらい前の日本のオタクを思い出すんです。今みたいに言いたい放題なのとは違って、自分一人で考え込んで、その煮詰まったものを発表したい、みんなに聞いてほしい。だからこそユーザーが集まるsteamの"コミュニティ"運営は大事です。ユーザー同士の交流をチェックし、メーカーへの意見にはちゃんと答えるようにする。またメーカーではなくコミュニティにファンがつく面もあるんですよ。実はsteamって検索機能が弱くて、それでいてタイトル数も多いから宣伝が大変なんですけど、新作が発売されるとそのページに同ブランドの過去作も表示される。そこから過去作の購入につながるケースは少なくありません。あるメーカーの方が冗談っぽく、steamで一番良い宣伝方法は新作をリリースすることだって言っていましたけど、Sekai Projectの新作が定期的に販売できているのは強みになっていると思います」